前回からの続きです。
「所得控除」型
法人税の課税所得の計算上、損金(税務上の経費)として控除できる金額を多めに認める(あるいは、益金(税務上の売上)の除外を認める)制度です。
法人税の「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」が一例です。
この制度の対象となる「特定機械装置等」を事業に使い始めた事業年度に、損金算入できる減価償却費が割増しになります。
割増額は最大で取得価額の30%にもなりますが、「特定機械装置等」を事業に使い始めた時点の資本金が1億円を超える会社には適用されません(租税特別措置法42条の6第1項、42条の4第3項、同8項6号、租税特別措置法施行令27条の4第12項1号)。
もっとも、その事業年度の課税所得が赤字であったり割増額に満たない場合には、どのみちこの恩典を使いきれませんから、期中増資によって資本金が1億円を超えることになっても、あまりもったいない感じはしません。
「貸倒引当金繰入額の損金算入」、「欠損金の繰越し控除」といった他の「所得控除」制度も同様です。
「税額控除」型
法人税の納税額から一定額を控除する(=まけてくれる)制度です。
法人税の「中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除」が一例です。
この制度の対象となる「特定機械装置等」を事業に使い始めた事業年度の法人税額から一定額を控除できる制度です。
控除額は最大で取得価額7%にもなりますが、「特定機械装置等」を事業に使い始めた時点の資本金が1億円を超える会社には適用されません(租税特別措置法42条の6第2項、42条の4第3項、同8項6号、租税特別措置法施行令27条の4第12項1号)。
その事業年度の課税所得が赤字で法人税額がゼロだったり、法人税額が少なくて控除額に満たない場合には、使いきれない制度です。
また、他の税額控除制度とバッティングした結果、すでに法人税額が控除額に未満となる場合も使いきれません。
こういう場合は、期中増資を優先しても良いでしょう。
他にも「試験研究費」「雇用」「設備投資」を促進するための税額控除制度がいろいろあります。
「軽減税率」型
適用税率を軽くする制度です。
法人税の税率は原則23.2%ですが、課税所得のうち年800万円相当額までは19%(平成31年3月31日まで開始事業年度については15%)に軽減されます。
期末資本金が1億円を超える会社は課税所得の全額が23.2%で課税されます(法人税法66条2項)。
このパターンは、実際に課税される所得と税額控除までを考慮しなければ最終的にメリットがあるといえるかどうか判定できません。
考慮要素が多くて難しいパターンともいえますが、税務メリットは800万円に対する税率差(原則税率と軽減税率)に限定されますので、法人住民税(法人税割)を考慮しても80万円に満たない程度です。
考慮要素が多くて難しいパターンともいえますが、税務メリットは800万円に対する税率差(原則税率と軽減税率)に限定されますので、法人住民税(法人税割)を考慮しても80万円に満たない程度です。
「超過税率」型
適用税率が高くなるというありがたくない制度です。
同族会社(少数のオーナー一族で支配されている会社)が剰余金を配当せずに社内留保すると、留保した利益にまで割高の税率で法人税が課税されます。
同族会社(少数のオーナー一族で支配されている会社)が剰余金を配当せずに社内留保すると、留保した利益にまで割高の税率で法人税が課税されます。
税率の上乗せは最大で20%です。
期末資本金が1億円以下ならばこの制度の適用が免除されるという恩典を受けられます(法人税法67条1項)。
将来の設備投資のために配当を抑えて内部留保を厚くしたいとお考えであれば、増資は控えた方が無難でしょう。
期末資本金が1億円以下ならばこの制度の適用が免除されるという恩典を受けられます(法人税法67条1項)。
将来の設備投資のために配当を抑えて内部留保を厚くしたいとお考えであれば、増資は控えた方が無難でしょう。
「均等割」型
法人住民税には「均等割額」と呼ばれる部分があります。
均等割額は所得ではなく、資本等の額(資本金+資本剰余金)と従業者数の組み合わせで決まります。
東京都23区内に事業所を一か所有する会社の場合は以下のようになります。
資本等の額 | 従業員数 | |
50人以下 | 50人超 | |
1000万円以下 | 7万円 | 14万円 |
1000万円超1億円以下 | 18万円 | 20万円 |
1億円超10億円以下 | 29万円 | 53万円 |
10億円超50億円以下 | 95万円 | 229万円 |
50億円超 | 121万円 | 380万円 |
資本等の額と税額の相関関係がはっきりしているのでわかりやすいパターンといえます。
支配株主がいる場合は要注意!
支配株主(親会社など)が大会社(資本金1億円超)の場合には、自社の資本金が基準以下であっても、特例が適用されない場合が多いです。
自社の資本の額に左右されないので、ある意味なやみが少なくなって楽ともいえます。
親会社が大会社になるかどうかの境界線付近にあると、親会社の事情に振り回されますので大変です。
まとめ
資本金をいくらにするかは、それを抑えることで得られる税務メリット(税負担が軽くなる)とその他のメリット(資金繰りが楽になる、取引先・銀行からの信用が増すなど)を比較して決めることになります。
その前提となるのが今期プラス向こう数年の業績と資金繰りの予測です。
ここまでいえば、ヤマグチが何をいいたいのか予想できますよね?
はい、そうです。
会計帳簿は正確かつタイムリーに記帳していきましょう。