Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

税務上の「交際費」

会計上の「利益」を計算するうえで「費用」は「収益」から控除されます。
個人所得税の「所得」を計算するうえで「必要経費」は「収入」から控除されます。
法人税の「所得」を計算するうえで「損金」は「益金」から控除されます。
先日のブログ「『所得』と『利益』はどう違う?」とも関連するお話ですが、会計上「一般に公正妥当な会計処理の基準」にしたがって「費用」とされていても、税務上「別段の定め」によって「必要経費」や「損金」にならないものがあります。
その代表例が「交際費」です。

税務上の「交際費」とは

税務上の「交際費」に含まれる費用として一番わかりやすいのは接待費用です。
取引先・お客さんを招いての会食、スポーツ観戦、ゴルフ、旅行など、簡単にいうと「仕事のうちなんだけど一緒に楽しんじゃう」イベントの費用が接待費用です。
この「仕事のうちなんだけど」という部分は「事業上の見返りを期待して」というニュアンスにとらえていただければよいかと思います。
したがって、何の見返りもなくお金を使うと、それは「寄付金」や「個人的支出」として考えることになります(たとえ帳簿上「交際費」という勘定科目に計上していても)。

贈答品も「交際費」のうち

贈答品の費用も「交際費」に含まれます。
取引先へのお歳暮・お中元の贈答品、訪問時の手土産は紛れもない交際費です。
会社のロゴが入ったノベルティなど、いわゆる販促品は「広告宣伝費」となりますが、高級品や広告宣伝効果が期待できないようなモノは「交際費」として取り扱うべきです。
例えば、いくら会社のロゴ入りボールペンとはいえ、モンブランのマイスターシュテック(@5万円くらい)とゼブラのサラサドライ(@150円くらい)とでは同じ扱いにはできません。
一本150円のボールペンなら、どのような場所でどう配ろうと「広告宣伝費」でOKですが、一本5万円のボールペンは広告宣伝効果があるといえるよほどの事情がない限り「交際費」とすべきでしょう。
また、ロゴが簡単にとれたり、目立たないところに形式的に入っているモノはあまり広告宣伝効果を期待できません。
税務調査でこういった販促品がみつかると、交際費として取り扱われがちです。
販促品を発注するときは常識的な費用対効果を意識しましょう。

関係者に対する「交際費」

関係者(従業員、役員・個人事業者の親族)に対する接待・贈答は「事業上の見返りを期待して」といえるかどうか微妙なケースが多いといえます。
社内の親睦会、優秀社員へのご褒美、役員に対する「渡しきり交際費」、一部の社員にだけ与えられるフリンジベネフィット(社用車の私的使用、会社財産を低額で譲り受けるなど)は、社員に対する「交際費」か「福利厚生費」かの区別も難しくなりますし、場合によっては臨時給与(ボーナス)としてもらった側に所得税の課税関係が生じる可能性もあります。
思い付きでこういった関係者に対してご褒美を与えると、後で予期せぬ課税関係を招くおそれがあります。
要注意です。

税務上「交際費」に該当すると…

自由に「必要経費」や「損金」にできません。
もっとも、個人の事業所得に関連する交際費は「事業上の見返りを期待して」いれば金額が多寡にかかわらず必要経費にできるといわれています。
しかし、これは「青天井」で必要経費にできるという意味にとらないほうが良いでしょう。
調査で高額の交際費が見つければ、調査官はどのような「事業上の見返り」を期待していたのか詳しく聞きたがります。
そこで調査官が納得できる「事業上の見返り」を説明できなければ、単なるプレゼント代(個人的支出)という扱いを受けて必要経費から除外されることになるかもしれません。
法人の交際費は、原則として損金になりません。
ただし、以下の特例があります。

(1)交際費から除外できる飲食費

ちゃんと取引先・お客さんを接待している場合で、一人当たりの飲食費が5000円以下であれば税務上の「交際費」に含めなくてもOKです。
5000円を超えると超えた部分だけでなく全体が原則どおり交際費扱いです。
飲みすぎ・食べ過ぎに注意しましょう。
また、取引先・お客さんが一緒でももっぱら社内関係者中心の飲食はこの特例の対象外です。
いつ、どこで、だれが、いくら会食したかちゃんと記録がなければこの特例を適用できませんから、酔っぱらう前にちゃんとメモを残しましょう。
どんなに酔っぱらっていてもがんばって領収書をもらいましょう。

(2)交際費のうち損金算入できる飲食費

上記(1)の金額を除いた残りの飲食交際費の50%を損金算入できます。
この特例の対象は「飲食費」部分だけですから、接待がらみの宿泊費、交通費、贈答品費は全額交際費になります。
また、社内イベントの飲食費は対象外ですから、全額が交際費になります。

(3)中小法人の定額控除限度額

期末資本金1億円以下の法人(中小法人。ただし親会社の期末資本金が5億円以上の場合を除く)については年800万円を限度に交際費(飲食費に限らず)を損金算入できます。
上記(2)とのいずれかを選択適用することになっています。

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中小法人は、一人当たり5000円を超える飲食接待費が年1600万円超であれば(3)より(2)を選択したほうが一般に有利と思われます。
個人は事業関連性をきちんと示すことができる「正当な」費用といえるかどうかを気にしてください。
法人は特例の対象となる接待飲食費を帳簿上特定しやすいよう経理処理を工夫しておくと、申告作業が楽になります。

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