Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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大法人の電子申告義務化

2020年4月1日以降開始事業年度から「大法人」の法人税・消費税の申告が電子申告に一本化されます。
電子申告をオススメしているヤマグチですが、「義務化」はちょっと強引すぎないかという感じがします。

対象法人の範囲

内国法人のうち事業年度開始のときの資本金または出資金の額が1億円を超える法人は、法人税(地方法人税を含む)および消費税(地方消費税を含む)については電子申告が義務付けられます。
相互会社、投資法人、特定目的会社は資本金・出資金の額にかかわりなく電子申告が義務付けられます。

なんのための義務化?

財務省が定めた「行政手続コスト削減のための基本計画」を受けての義務化のようです。
この「基本計画」を見てみると、いちおう「e-Tax の使い勝手の大幅改善」も検討しているようですが、どうも行政にとって「大幅改善」になっても納税者にとっては相変わらず使いにくそうです。
ともかく電子申告の利用率を向上させることを目標にしており、利用者の利便性を向上させるという視点に欠けているように感じます。

たとえば、「e-Tax の送信容量の拡大」をみると添付書類の送信容量(現行1.5MB)を8MBまで拡充することになっています。
「基本計画」によれば8MBはPDF(A4サイズ)換算で100枚相当(現行20枚)とのことですが、大法人に電子申告を義務付けるにしては依然容量不足ではないでしょうか?
法人の規模が大きくなると、個別記入が負担になる申告書別表があります。
例えば、減価償却明細(別表16(1)、(2))は、個々の資産ごとに一列づつデータを入れていくより、エクセルなどの明細を「別紙参照」として添付したほうが利用者にとって便利です。
大企業は償却資産を自社システムやERPで管理していることが多いので、そのデータをエクセルやPDFに出力して添付できれば申告業務を相当合理化できます。
しかし、
何万件という償却資産をもっている大法人にとっては、添付できるページ数がA4サイズ100ページ程度に制限されているのでは「大幅改善」は程遠いでしょう。

大企業の犠牲のうえの実績作り?

一昔前の統計になりますが、2016年度に法人税申告書を提出した法人の総数は約268万社でした(国税庁HP統計情報)。
そのうち資本金1億円以上の法人数は約3万社、割合にしてわずか1.1%です。
わずか1.1%の大法人の電子申告率を100%にする意義はどこにあるのでしょうか?
本当に「行政手続コスト削減」を目指すなら、大勢を占める納税者の利用率を1%でも向上させるほうが効果的でしょう。
インセンティブがなければ納税者は電子申告を利用しません。
システムの利便性を向上せずに電子申告を法律で義務付けることは行政のエゴです。
98.9%の法人に対するエゴは無理でも、1.1%の法人に対するエゴなら許されると思ったのでしょうか?
結局のところ、役所の実績作りのために大企業を犠牲にしているように感じます。

***
電子申告は便利です。
まだまだ利便性向上の余地はありますが、申告内容が比較的シンプルな法人にとっては利用する価値は高いと思います。
だからこそヤマグチは電子申告をおすすめしています。
しかし、別表や添付資料が多い場合には使いにくく、紙ベースの申告のほうが手っ取り早いと考える大法人が多いのも事実です。
すべての納税者のニーズを満たすことは不可能ですし、それを目指せば膨大なコストがかかります。
ならば、完全義務化ではなく選択の余地を残すべきでしょう。
国民は納税の義務を負っています。
しかし、それを超えて行政コストを肩代わりする義務はありません。

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