税金を期限までに納めなかったら、本税とあわせて「附帯税」も納付しなければなりません。
附帯税には「延滞税」「利子税」「加算税」がありますが、納税が遅れた理由によっては同時に複数が賦課されますから、けっこうな負担になります。
今回は、そのうち「延滞税」と「利子税」についてお話しします。
込み入ったお話しなのでチャートを多用しております。
スマートフォンでご覧の方には見づらいと思いますが、何卒ご容赦ください。
Table of Contents
遅れた納付に対する遅延利息的なペナルティーです。
法定納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて賦課されます。
割合は年14.6%または7.3%とべらぼうに高いです(国税通則法60条2項)。
さすがにこの低金利のご時世にそれは高すぎるということで、現在は市中金利に連動させる特別措置が適用されています(租税特別措置法94条1項)が、それでも高いです。
割合は以下のとおりです。
特例基準割合とは、銀行の短期貸付の平均利率として財務大臣が告示する割合割合のことです(租税特別措置法93条2項)。
最近の特例基準割合に基づく延滞税率は以下のようになっています。
特例基準割合 | 納期限まで | 納期限の翌日から 2月経過日まで |
その他 | |
平成26年1月1日~ 平成26年12月31日 |
1.9% | 2.9% | 9.2% | |
平成27年1月1日~ 平成27年12月31日 |
1.8% | 2.8% | 9.1% | |
平成28年1月1日~ 平成28年12月31日 |
1.8% | 2.8% | 9.1% | |
平成29年1月1日~ 平成29年12月31日 |
1.7% | 2.7% | 9.0% | |
平成30年1月1日~ 平成30年12月31日 |
1.6% | 2.6% | 8.9% | |
平成31年1月1日~ 平成31年12月31日 |
1.6% | 2..6% | 8.9% |
延滞税の期間計算については、修正申告・更正によって追加納付すべき税額が発生した場合に一定期間を控除する特例が設けられています。
これは修正申告または更正が遅れた場合に延滞税の金額が過大になり納税者に酷な結果になることを防止するとともに、納税者または税務署の事情により修正申告・更正の時期が異なることによる納税者間の不公平を緩和することを目的とする措置です。
したがって、この特例は、不正に国税を免れていた者が税務調査を受けてから更正を予知して提出した修正申告書(特定修正申告書)や不正に国税を免れていた者に対する更正(特定更正)については適用されません。
(期限内申告書を提出→修正申告・更正があった場合)
法定申告期限から1年を経過した日よりも後に修正申告または更正がなされ、それによって追加納付すべき税額が確定したときは、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から修正申告または更正がなされた日までの期間が除かれます(国税通則法61条1項1号)。
例えば、法定申告期限が平成27年3月15日の所得税について平成30年7月10日に修正申告し、同年9月13日に追加納付をしたとすると、延滞税がかかるのは以下の期間になります。
修正申告の場合、修正申告書の提出日が「納期限」になります(国税通則法35条2項1号)。
よって、「納期限までの期間」と「納期限の翌日から2月を経過する日までの期間」については、7.3%か「特定基準割合+1%」のいずれか低い割合で計算しますが、特例により法定申告期限から1年を経過する日の翌日から修正申告がなされた日までの期間が除かれています。
これに対して、更正処分の場合、更正通知の発せられた日の翌日から1月を経過する日が「納期限」になります(国税通則法35条2項2号)。したがって、法定申告期限が平成27年3月15日の所得税について平成30年7月10日に更正通知が発せられ、同年9月13日に追加納付をしたとすると、延滞税がかかるのは以下の期間になります。
特例により法定申告期限から1年を経過する日の翌日から更正がなされた日までの期間が除かれています。
この例では「納期限」から2月内に納付しているので、納付までの期間に適用される割合は軽減割合のままです。
(期限後申告書を提出→修正申告・更正があった場合)
期限後申告書の提出日の翌日から起算して1年を経過した日よりも後に修正申告又は更正がなされ、それによって追加納付すべき税額が確定したときは、期限後申告から1年を経過する日の翌日から修正申告または更正がなされた日までの期間が除かれます(国税通則法61条1項2号)。
例えば、法定申告期限が平成27年3月15日の所得税について平成27年4月10日に期限後申告書を提出したが間違えがあったので、平成30年7月10日に修正申告し、同年9月13日に追加納付をしたとすると、延滞税がかかるのは以下の期間になります。
(期限内・期限後申告書を提出(A)→減額更正(B)→修正申告・増額更正(C)があった場合)
当初から正しい減額更正を受けることができた納税者と比較して公平な取り扱いになるように平成28年度改正で追加された特例です。
Aにかかる税額までの部分については、
①Aにかかる税額の納付があった日の翌日からBの通知が発せられた日までの期間
②Bの通知が発せられた日の翌日からCの申告書が提出もしくは更正通知書が発せられた日までの期間
が除かれます(国税通則法61条2項)。
①の期間に限っては「特定修正申告」「特定更正」に係る延滞税の計算期間からも控除できることになっています。
例えば、平成27年3月15日に期限内申告書を提出し、所得税100を期限後納付したところ、税務調査の結果、所得税を80に減額する更正通知が平成28年7月31日に出され、20の還付を受けていたとします。
しかし、その後再調査の結果、正しい所得税は200であったとする再更正が平成30年7月10日に通知され、同年9月13日に120を追加納付をしたとすると、延滞税がかかるのは以下の期間になります。
ちなみに、Bの減額更正が税務調査ではなく、納税者からの「更正の請求」をうけてなされたものであるときには、以下のようになります。ややこしいです。
源泉徴収税額の場合
法定納期限から1年を経過する日後に税務署等から納税告知書が発せられたときは、その法定納期限から1年を経過する日の翌日から告知書が発せられた日までの期間が除かれます(国税通則法61条3項1号)。
例えば、法定納期限が平成27年3月10日の源泉所得税について平成30年7月10日に納税告知書がでた場合、延滞税がかかるのは以下の期間になります。
その他のとき、例えば自分で納付忘れに気が付いて自主的に期限後納付したときは、その法定納期限から1年を経過する日の翌日から納付の日までの期間が除かれます(国税通則法61条3項2号)。
上記の例で自主納付したとすると、延滞税がかかるのは以下のように法定納期限から1年間に限定されます。
源泉税の調査で調査官が「自主納付でどうですか?」とすすめてきたときには、この延滞税が軽くなるメリットとグレーゾーンをあきらめて納付に応じるデメリットを比べてみてください。
延納・物納、申告期限の延長を受けている場合、本来の納期限の翌日から延長された期間について利子税が課されます(国税通則法64条)。延長期間中に納付されたときには、利子税がかかるのは納付の日までの期間です(当然ですね)。
利子税はペナルティーというより、納期限を延長してもらった期間に対する利息と考えたほうがよいと思います。
延滞税とちがって法人税の所得の計算上損金に算入できます(法人税法38条1項3号)。
延滞税の計算期間に利子税の計算期間が含まれるときは、利子税の計算期間について延滞税はかかりません(国税通則法64条2項)。
利子税の税率は所得税法、法人税法、相続税法に個別に規定されていますが、原則年7.3%で統一されています。
延滞税と同じく軽減措置があり、7.3%と特例基準割合のいずれか低い割合を適用することになっています(租税特別措置法93条)。
たとえば、本来の申告納期限が平成30年5月31日だった法人税について1月の申告期限の延長を受けてた法人が、遅れて同年9月4日にやっと納付したとすると、利子税、延滞税の計算は以下のようになります。
地方税にも同様の附帯税があります。
国税の「延滞税」と「利子税」をあわせて「延滞金」という呼び名になってます。
法人道府県税(地方税法56条2項)、法人事業税(地方税法72条の44第2項、72条の45第2項)、個人事業税(地方税法72条の53)、市町村税(地方税法326条)といった具合に税目ごとに地方税法に定めがあります。
割合は国税と全く同じく、原則が年14.6%→納期限から2月以内なら7.3%、申告期限延長期間中は7.3%ですが、特例基準割合に連動する特例があるところまで国税と同じです(地方税法附則3条の2)。
「延滞金」のうち申告期限延長期間に対応する部分(利子税相当)が法人税の所得の計算上損金に算入できるところまで同じです(法人税法55条3項2号括弧書き)。
***
延滞税(延滞金)は遅れた納税に対するペナルティーですが、悪質な場合を除いて賦課期間が制限されています。
1年を超える遅延納付であっても、法定申告期限の翌日からから1年で頭打ちになることが多いと思います。
遅れてでもいいから正直に納税してもらうための軽めのペナルティー(イエローカード)といえます。