Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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税務計算の端数処理

課税標準額や税額の計算過程で計算に端数が生じることがあります。
そんなときに気分にまかせて端数処理をしてはなりません。
たいていの場合、法令にちゃんと定めがあります。

国税の場合

国税通則法という法律に以下のような定めがあります。

課税標準

課税標準は千円未満切捨てです(国税通則法118条1項)。
ただし、源泉徴収税額の課税標準は円未満切捨て(国税通則法118条2項、同法施行令40条1項)になってます。

税額

原則

税額は百円未満切捨てが原則です(同法119条1項)。
ただし、次のような例外もあります。

源泉徴収税額

源泉徴収税額の円未満は切捨てです(同法119条2項、同法施行令40条2項)。

納期ごとに分納する税額

複数の納期ごとに分納する税額は期限ごとの分割金額に1,000円未満(源泉徴収に係るものについては、1円未満)の端数があるときは、その端数金額は、すべて最初の納付の期限に係る分割金額に合算することになっています(国税通則法119条3項)。

附帯税

附帯税(加算税・延滞税)の基礎となる税額に1万円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が1万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます。
附帯税の税額そのものに百円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満(加算税に係るものについては、5千円未満)であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます。
つまり、千円未満の延滞税、5千円未満の加算税は払わずに済みます。
ちょっとラッキーな気分になります。

期間計算(年数・月数)

月数・年数は暦にしたがってカウントすることが国税通則法に定められています(同法10条1項2号)が、月未満・年未満の端数については同法に定めがありません。
このような場合は、各税金に関する法令に定めがあるはずです。

例: 年の途中で取得した固定資産の減価償却費の計算
減価償却費の年額を事業供用の日からその年(個人事業者の場合)・その事業年度(法人の場合)の末日までの月数で按分しますが、その計算に使う月数は暦に従って数え、一月未満の端数を切り上げることになっています。(所令132条2項、法令59条2項)

割合

計算過程で「割合」を用いることがありますが、これについては国税通則法に定めはありません。個別の法令にも定めがあるとは限りません。

定めがある例: みなし配当のプロラタ計算

会社が分割型分割、株式分配、資本の払戻しをしたときに「みなし配当」というものが生じて分配額から所得税の源泉徴収が必要になることがあります。
その詳細については今回割愛しますが、この「みなし配当」の計算過程で「交付直前における純資産額に対して交付金額が占める割合」という割合を用います。
この割合については小数点以下3位未満の端数を切り上げることになっています(所得税法施行令61条2項3号、同令23条1項2号)。

定めがない例:消費税の課税売上割合

個別対応方式・一括比例配分方式で仕入税額控除の額を計算する際に用いる割合ですが、法令(消費税法30条6項、同法施行令48条)に端数処理の定めがありませんので、割合計算の基礎となる分母・分子をそのまま用います。

消費税の端数処理

ここにいう「消費税の端数」とは売上代金や仕入れ代金に含まれる消費税を税抜(外税)で経理する際に生じる円未満の端数のことです。この経理処理上計算される消費税は国税通則法にいう「税額」(納税額)ではありませんので、先にみた端数処理の通則は適用されません。
税抜処理によって生じる仮受・仮払消費税の円未満端数については、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを採るのも事業者の自由です。

税抜経理による場合でも、消費税申告書上は一旦すべての取引を税込み金額に戻して、課税標準額・仕入税額・納税額を計算することになっているので、個々の取引の消費税額の端数処理は納税額には影響しないのが原則です。

ただし、税抜経理している場合の特例を適用して申告(仮受・仮払消費税の積み上げ計算による申告)をする場合は、端数処理後の仮受・仮払消費税をもとに納税額を計算するため影響します。
取引数の多い大手流通業ではこの税抜経理の特例が実質的に原則法になっていますが、端数処理の違いによって納税額が億円単位で変わることもあると聞きます。

地方税の場合

国税通則法と同様の規定が地方税法の総則(第1章14節)にあります。

課税標準

千円未満切り捨てが原則です(地方税法20条の4の2第1項)。
ただし、道府県民税の利子割額・配当割額など一定の地方税の課税標準については端数処理なしです(同法施行令6条の17第1項)。

税額

百円未満切り捨てが原則です(地方税法20条の4の2第3項)。
ただし、道府県民税の利子割額・配当割額など一定の地方税の確定税額について1円未満の端数があるとき、又はその全額が1円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てることになっています(同法施行令6条の17第2項)。

延滞金・加算金

その計算の基礎となる税額に千円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が2千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます(地方税法20条の4の2第2項)。
延滞金又は加算金の確定金額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てます(同条5項)。

期間計算(月数・年数)

民法139~141条、143条に従うとされています(地方税法20条の5)。
月・年の数え方(民法143条)は国税通則法が定める国税に関する期間計算の通則(通則法10条1項)と同じです。

民法143条
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

期間計算の端数処理は地方税法の総則(第1章)にはなく、各税目に関連する条文の中で個別に定められています。

例:法人住民税(均等割)の税率

算定期間中(確定申告の場合は事業年度中)において事務所等を有していた月数に応じて均等割額を算定します。
ここにいう月数は、暦に従って計算し、1月に満たないときは1月とし、1月に満たない端数を生じたときは切り捨てることになっています(地方税法52条3項。312条4項)。

例:分割法人の法人住民税(法人税割)の課税標準

法人住民税のうち法人税割の課税標準はその名が示すように法人税額です。
複数の道府県・市町村(自治体)に事務所・事業所(事務所等)を有する法人は、それぞれの自治体に法人住民税の申告・納税をしますが、法人税額を一定の基準に従って按分した金額が各自治体に申告する課税標準になります(地方税法57条1項、312条の13第1項)。
法人税割の課税標準の分割基準は算定期間(確定申告の場合は事業年度)の末日現在における各事務所等で働く従業者の数です(同法57条2項、312条の13第2項)が、算定期間中に新設・廃止した事務所等、従業者数に著しい変動がある事務所等については従業員数の補正計算をすることになっています(同法57条3項、312条の13第3項)。
この補正計算にあたっては、事務所等が所在していた月数や算定期間の月数を用いますが、その月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする(切り上げ)と定められています(同法57条4項, 312条の13第4項)。

***

会社の規模が大きくなると、端数処理の間違えが思わぬところで納税額の過不足が生じることがあります。
特に「割合」を用いて計算するときは、端数処理の仕方で納税額が何千万円も変わってしまうことがあります。怖いです。

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