著者は官民両方でテレワークを推進してきた方です。
「オフィス」中心から「人」中心の働き方へシフトすると、業務効率が改善されて「企業」「働き手」だけでなく「地方」にもメリットがあると説きます。
実際に佐賀県庁でテレワーク導入を成功させたご本人の著述ですから非常にリアリティがあり、官僚による旗振り的な啓蒙本とは一味違います。
テレワークの先行事例として佐賀県庁のほか、カルビーさん、セールスフォース・ドット・コムさんが紹介されています。
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「オフィス」中心に人集めをしていては、全国にいる有能な人材を活用できないということに大企業も気づき始めています。
カルビーさんの事例では、これからの若い世代は「人」中心に働く場を提供している企業に魅力を感じていくであろうと予感させます。
いろいろしがらみや制約の多い県庁や大企業でも、トップがその気になればここまでできるという好例を示している本です。
もっとも、トップダウンだけではうまくいかなかったであろうという点にもちゃんと触れています。
「何のために」テレワークを導入するのか、働き手が「どのようなメリット」を享受できるのかというイメージをみんなで共有できなければ、テレワーク導入はうまくいかないと説きます。
ブログ「バックオフィスにも夢を」で、バックオフィスを「いきいき」と働かせるには、トップやフロントと「夢」を共有させればよいと提言しましたが、そこで申し上げたかったことが、カルビーさんの改革事例(P109)で紹介されています。
セールスフォースさんの事例は地方への企業誘致の新しい取り組み例としてあらゆる地方自治体に希望をあたえるものだと思います。
先日のブログ「こどもの日に思う」で、子育て世代への支援策として在宅勤務・サテライトオフィスについて触れましたが、地方振興策として効用もあるとは気づきませんでした。
また、最近のブログ「バックオフィスにも夢を」で「頭出し」しかできなかった「業務フローの『見える化』」についても、セールスフォースさんの事例の中で(P120-122)で言及されています。
まるでヤマグチの表現力不足をフォローしてくれているかのようなありがたい事例紹介です。
あなたのいるところが仕事場になる
「経営」「ワークスタイル」「地域社会」が一変するテレワーク社会の到来
森本登志夫〔著〕
大和書房(2017年7月)
ISBN:978-4-479-79605-3
1,700円(税別)