Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

印紙税について

収入印紙のデザインが25年ぶりに変更されるそうです。
見る角度を変えると「日本」という文字やサクラの花の絵が立体的に浮かぶほか、ブラックライトで照らすとローマ字の「NIPPON」という文字などが光って見える特殊なインキを使った偽造防止の加工が施されているそうです。
偽造収入印紙が大量に金券ショップに持ち込まれたりする事件がたまにニュースになりますが、偽装グループに対抗するためにもこうしたアップデートが必要だったのでしょう。
このニュースを見て、今回は印紙税について書かせていただこうと思います。

文書に課税される「印紙税」

ヤマグチは長年金融機関で税務を担当していました。
金融機関は顧客との間でいろんな文書を取り交わします。
その中には「印紙税」が課税されるかどうかはっきりしないものが結構多く、そうした文書の課税関係を調べることも私の仕事の一つでした。
「〇〇という文書、いくらの印紙が必要ですか?」というざっくりとした質問がよく寄せられましたが、印紙税が課税されるかどうか、課税されるとして税額がいくらになるかは文書の内容によります。
質問される方は気楽に聞いてくるのですが、文書の内容をじっくり読みこまなければ判断できないケースにあたると大変でした。
文書のタイトルだけでは判断できない難しさがあり、印紙税は結構めんどうな税金です。
ちなみに、納付もれが税務調査で見つかると最大で本来納税すべき税額の2倍の過怠税(ペナルティー)が課されますから、本来の3倍コストがかかることになります。ご注意ください。

収入印紙≠印紙税

そんな私の経験では、多くの人が「収入印紙」と「印紙税」を混同していました。
収入印紙という税金があると思っている人や、収入印紙で納付する税金を印紙税というものだと思っている人が多いのですが、どちらも違います。

収入印紙は税金の納付以外にも国の事務手数料の納付にも使われる「金券」の一種です。
それ自体が税金というわけではないです。
また、印紙税の納付方法は必ずしも収入印紙の貼付に限られません。
どんな文書をどれだけ作成するか決まっている場合には、先に印紙税を現金で納税しておき、税務署で課税文書に「税印」というスタンプを押してもらう方法もあります(印紙税法9条)。
どんな文書をどれだけつくることになるか決まっていない場合には、あらかじめ一定額を納付しておき、その金額の範囲内で自分で「納付印」を文書にスタンプできる機械(納付計器)を使う方法も認められています(印紙税法10条)。

納付計器の利用は、あらかじめ税務署長の承認を受ける必要があります。
事前手続きはめんどうかもしれませんが、納税額にあわせた収入印紙をストックしておく必要がなく、管理や盗難の心配がないというメリットがあります。
いろいろな種類の文書を日常的に作成する業種(金融関係、建築関係など)では、納付計器を利用するほうが便利と思います。

収入印紙の貼付もスタンプも省略できることも

ATM利用明細には「印紙税申告納付につき税務署承認済」という表示があることが普通です。
ATMで現金を預けた場合にATMからでてくる利用明細には200円の印紙税が課税されることになっているのですが、これにいちいち印紙を貼ったり、納付計器でスタンプするわけにはいきません。
そこで、このように一定の期間に繰り返し大量に課税文書を作成する場合には、実際に作成した文書のログに基いてあとから印紙税を申告・納税することができる特例が設けられています(印紙税法11条)。
ATM利用明細にあるアノ表示は、この特例を受けることについて税務署から事前承認を受けているという意味です。

印紙税はだれが負担する?

印紙税の納税義務者は「文書の作成者」とされていますが、誰が税額を負担すべきかまでは法律に定めがありません。
領収書のように代金を受け取る一方だけが作成者となる場合は、その一方だけが納税義務者であり税額の負担者となるのであまり問題にはなりません。
契約書などの場合は契約当事者双方が「文書の作成者」にあたるので、共同で納税義務者になります。
ただし、税額の負担は、いずれか一方が全額負担しても、折半でも、印紙税法は関知しないので、その負担をめぐって当事者間で話し合いが必要です。
契約当事者の力関係によっては一方的に負担を押し付けれたりすることもありえます。

ペーパーレスですべて解決?

印紙税の課税関係はややこしく、前例のない文書を作る際には悩みます。
また、納付のために収入印紙を買いにいったり、管理する手間もあります。
さらには、税負担を相手方と交渉したりするのも面倒です。

こうした悩みを解消する究極の方法は取引文書のペーパーレス化です。
印紙税の課税物件となる「文書」はハードコピーに限定されています。
というより印紙税法が電子文書の存在を前提としていないため、ソフトコピーには課税できない状態です。
今後法律が改正される可能性は否定できませんが、いまのところ課税庁は、メール、PDFなど紙に出力されない文書には課税しない方針をとっています。
課税物件となる文書を作らなければ悩みはゼロです。
取引相手の協力なしには実現できないお話しですが、クラウドサービスが定着してきた現在ならば可能性は高いと思います。

当事務所でも契約書はクラウド上のソフトコピーに電子署名でお願いしております。
このようなサービスも用意されています。
思い切ったペーパーレス化いかがでしょうか?

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