さて、確定申告シーズンが目前となりました。
2018年の所得税確定申告書の受付は2月18日から(還付申告書は1月4日から)3月15日までです。
今回の決算・申告の経験を活かして、来年のいまごろ2019年分の決算・申告を余裕でこなせるように工夫していきましょう。
今年最初のブログのテーマは、決算申告時期になって露呈しがちな問題点とその事前の対策です。
個人事業者の方を前提にしていますが、法人の決算・申告にも通じるところがあります。
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事業用とプライベートなお金はしっかり区別すべきです。
これができていないと確定申告のときに困ります。
できれば、財布を別にして、事業用資金の残高が分かるようにしておいた方がいいです。
一定期間の収支と資金の増減を比較すると一致しないことはよくあります。
そんな時は、レシートの紛失や、もらい忘れ、事業資金の私的流用(私的な費用は必要経費にできません)が疑われますが、公私いっしょの財布では、事業資金の「あるべき残高」がわかりませんから、間違えに気づくことは困難です。
個人事業者ならまだしも、法人化したにもかかわらず、会社と個人のお金の区別ができていない状態は論外です。
決算・申告の際に問題になるだけでなく、将来銀行などから融資の審査を受ける際にも相当印象が悪くなります。
【対策】
事業上の収支はできる限り銀行口座を通すようにしましょう。
通帳の入手出金履歴が最低限の証明として使える可能性があります。
また、インターネットバンキングを利用すれば、後述する「作業の効率化」にもつながります。
現金商売なら現金出納帳は必須アイテムです。
これがなければ正確な決算・申告は不可能です。
レシートの紙質によっては時間が経つと印字面が消えてしまうことがあります。
また、複写式の手書き領収書も字がかすれて読みにくいものがあります。
こんな感じです。こうなるともはや解読不能です。
20181230
人間の記憶も時間とともに薄れていきます。
早めに経理処理に回せば対処できるかもしれませんが、長時間ため込むと、必要な時にもはや使い物にならなくなっているかもしれません。
【対策】
事業用のクレジットカードを利用するのも良い方法です。
利用明細をみればいつ・どこで・いくら経費を使ったか思い出せます。
利用明細が届く→レシートと照合→経費処理というサイクルを毎月ルーチン化すればレシートがどこにいったか分からなくなるリスクも減らせるでしょう。
何事も、始めてみないことには気づかない問題点をはらんでいるのが世の常です。
決算・申告も時間の余裕をもって行うべきです。
途中で資料が足りないことや、調査が必要だということに気が付くかもしれません。
そのためにも、定期的に帳簿をつけておくことをお勧めします。
【対策】
できれば毎日終業後、それが無理なら週末に取引を記帳してください。
最低でも当月末か翌月初までにその月の取引の記帳を済ませておくべきです。
年に一度の一発勝負はあまりにもリスキーです。
手に負えない状態になって持ち込まれても、税理士がお助けできるかわかりません。
日頃からマメに帳簿をつけていれば問題ないのですが、先送りしてきた仕事を一度に片付けるのは大変です。
そもそも決算・申告時期であってもいつもどおりに営業しているはずですから、先送りしてきた仕事をこなすための時間の余裕はありません。
また、日頃できていないことをこの時期いきなりできるようになれるとも思えません。
結局、時間的・能力的に無理だということがわかって慌てることになります。
慌てると精神的にも辛いですし、間違えも増えます。
【対策】
時間の管理とも共通することですが、道具をうまく使うと時間的余裕とともに作業の精度もあがります。
経理に関しては省力化・効率化の道具がたくさんあります。
クラウド会計とインターネットバンキング、スキャナーなどを組み合わせることで、手作業を大幅に減らせます。
大抵の会計ソフトはCSVファイルのデータを読み込めるようになっています。
現金出納帳、売上・仕訳帳をエクセルなどのスプレッドシートで作成しておき、それをもとに仕訳データを作成してCSV形式のファイルに保存すれば、仕訳データを一気に会計ソフトに「流し込む」ことができます。
一件ずつ会計ソフトに「手入力」するよりもはるかに楽です。
もっとも、こうした道具も日頃から使い慣れてこそ威力を発揮します。
年に一度の一発勝負のためではなく、日頃からマメに記帳していくための道具とお考え下さい。
正直に申し上げて、申告書を手書きで記入していくのは税理士でもやりたくない作業です。
計算もめんどうですし、書き間違えても訂正する余白もありません。
毎年各税理士会が確定申告相談会(無料)を開催していますが、開催日が限られています、どこも込んでいますので、聞きたいことを十分に相談できるとは限りません。
また、「相談会」では申告書の作成は納税者自身でしていただくことになっていますので、税理士が申告書を記入するわけではありません(あくまでも書き方の相談にのるだけ)。
【対策】
個人所得税限定ですが、国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」で確定申告書・決算書を作成できます。
必要事項を入力していけば、自動的に所得と税額を計算して申告書を作成してくれます。
出来上がった申告書はカラープリンターで印刷してそのまま税務署提出用として使えますし、①利用者識別番号、②マイナンバーカードなどの電子証明用ICカード、③ICカードリーダーが準備できていれば「作成コーナー」から電子申告することもできます。
申告書が出来上がったら期限までに税務署等に提出しなければなりません。
提出方法は持参、郵送、電子申告(国税はe-Tax、地方税はeLTAX)の三通りあります。
忙しいのに税務署まで持参するのは億劫でしょう。
3月15日間際になると申告書を提出するだけでも窓口に列ができています。
郵便局・ポストが遠いと郵送もめんどうです。
申告書の控えに受領印が欲しければ返信用封筒を同封する必要があります。
これがなければ税務署は控えを返送してくれません。
結果的に申告書を提出した証明が手元に残らなくなります。
また、窓口・郵送で提出した申告書はしばらく税務署内に留め置かれ、実際に事務処理に回されるまで時間がかかります。
還付申告の場合は、還付金の振込まで結構待たされます。
【対策】
個人所得税の申告ならe-Taxが便利です。
還付手続きも窓口提出・郵送より早めに処理されます。
ただし、インターネットに接続したPCと、①利用者識別番号、②マイナンバーカードなどの電子証明用ICカード、③ICカードリーダーが必要です。
利用者識別番号を取得するには税務署への届け出(郵送可)が必要です。
2019年1月からは利用者識別番号に代えてパスワードを使って電子申告することも可能になりますが、パスワードを取得するために税務署に本人が行かねばなりません。
いずれにしても電子申告をするには事前の準備が必要ですからお早めに。
電子申告に対応している税理士に申告書の作成・提出を依頼するなら①~③は不要です。
納税額があればこれも期限(3月15日)までに納付しなければなりません。
たまにですが、申告書を出したものの納税を忘れる方がいます。
税理士から渡された納付書をなくしてしまう方もいます。
期限後納付には延滞税がかかります。
本来なら払う必要のない出費である上に、翌年の申告時の必要経費・損金にもできませんから、本当に「払い損」です。
【対策】
口座引落しで納税できます(税務署で事前手続きが必要です)。
電子申告するとインターネットバンキングか「ダイレクト納税」を使って納付できます。
インターネットバンキングは納税者本人が納付手続きをしなければなりませんから、納付書を使う場合と同様に納税し忘れるリスクが残りますが、銀行など金融機関に出向く必要がないので、思い立ったときにいつでも(土日・祝日、深夜でも)納税できるメリットがあります。
「ダイレクト納税」は税務署での事前手続きが必要ですが、インターネットバンキングを利用しなくても電子申告と同時に納付手続きを済ますことができるので、納税し忘れるリスクを減らせます。
申告を代理する税理士に納税手続きを依頼することもできます。
Payeasy
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かつて私は「年に一度の一発勝負」で自分自身の決算申告に挑んでいました。
まぁ、サラリーマンの副業の申告でしたからそれでも何とかなりましたが、今はそういうわけにはきません。
毎日コツコツ記帳していますが、クラウド会計+インターネットバンキング+スキャナーで処理していますので、ほとんどデータの打ち込みはしていません。
この気楽さをみなさまにも体感していただきたいです。