Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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事業拡大とタックスプランニング(3)

前回からの続きです。

6. 支店・関連会社の設置

事業税、事業所税、法人税、所得税に影響します。

(1)国内支店等の開設

ア 事業税分割法人

複数の都道府県に事業所等をもっている法人は、各都道府県に事業税を分割して申告・納税する必要があります(地方税法72条の48)
これは事業税総額をどう分割するかの問題なので、納税額総額にはそれほど影響しませんが、分割基準によっては申告作業の手間が増えますし、各都道府県に申告・納税する手間は確実に増えます。

他の都道府県に支店を開設するということは事業税申告の手間が増えると覚悟してください。

イ 償却方法の選択

固定資産の償却方法は支店等の事業所単位で選択することも可能です(所得税法49条、法人税法31条)
各支店等の事情に即して償却方法を変えることもできますが、償却方法が統一されていないと経理・申告の手間は増えます。

税務メリットとバックオフィスの手間を天秤にかけて判断することになります。

ウ 事業所税

複数の政令指定都市に支店等を開設すると各政令指定都市に事業所税の申告・納税が必要になります(地方税法701条の32、701条の43)
事業所の面積、従業者数が分散することで事業所税の納税が免除されることもありますが、その場合でも「免税点以下申告」が必要になるので、申告先の政令指定都市が増えるだけ申告作業の手間も増えます。
支店等の増設に対応してバックオフィスの体制を整える必要があります。

(2) 国外投資

海外の取引先に資金援助(貸付・出資)して利子・配当などのリターンを受け取るようになると、相手国で課税を受けることがあります。
相手国で課税されても、受け取ったリターンは日本で所得税・法人税の課税を受けるのが原則ですから、日本と取引国との間で「二重課税」が生じます。
この二重課税状態を解消するため日本の所得税・法人税から相手国で課税された外国の所得税(外国税)を控除する「外国税額控除」という制度が用意されています(所得税法95条、法人税法69条1項、4項各号)。
もっとも、「外国税額控除」にはいろいろ制限や要件がついていますので、「二重課税」を完全に解消できる保証はありません。
また、相手国によっては「租税条約」を適用することで「二重課税」を緩和できることもあります。
国外投資からどのようなリターンを得るのか、相手国でどのような課税を受けるのか、租税条約の恩典を使えるのか、その手続きをだれがするのか、二重課税をどの程度まで解消できるのか、検討すべきことが一気に増えます。

(3)海外支店の開設

海外支店を開設すると、支店の所得に対して現地で所得税・法人税が課税されるのが普通です。
日本の所得税・法人税は海外支店の所得も含めた「全世界所得」(支店利益の送金の有無とは無関係)に課税されますから、支店の所得に対して日本と現地国で「二重課税」が生じます。
これについても外国税額控除(所得税法95条、法人税法69条1項、4項1号)のプランニングと申告が必要になります。
なお、支店の所得については租税条約の恩典は適用されません。
「外国税額控除」だけでどこまで二重課税を解消できるのか、その重要性が増します。
また、現地での支店決算、税務申告の負担が生じますから、海外支店のためのバックオフィス業務が必要になります。
日本からサポートする、現地にバックオフィス機能を持たせる、いずれにしても手間とコストは確実に増えます。

(4) 海外関係会社の設立・取得

現地法人や現地企業との共同出資会社(JV)の設立は、海外支店の開設よりも税務申告の手間が増えるとお考えいただいて間違いないです。
移転価格税制(租税特別措置法66条の4)、特定多国籍企業グループに係る国別報告事項(租税特別措置法66条の4の4)、タックスヘイブン税制(租税特別措置法66条の6)といった国際課税ルールが日本の親会社等に適用されます。
相手国に同様の税制があれば、同時に相手国の現地法人・JVでも申告・報告義務が課されることになります。
とくに「国別報告」の事務負担は考慮すべき重要事項です。
実際の申告額に影響がなくても、多国籍企業グループに属する限り継続的に情報提供が必要になります。
しかも、自社だけでなく他のグールプ会社の分まで報告しなければなりません。
企業グループ内で情報を共有する体制を整える必要がありますが、これはけっこうな事務負担になります。
現地法人・JVからの受け取る配当のタイミング・金額についてもプランニングが必要です。
日本と相手国の税制・税率の違いや、租税条約を適用することで課税関係も変わってきますから、プランニングは複雑になりがちです。
最近は合法的なプランニングであっても「行き過ぎた節税」に対する風当たりが強くなっています。
そういった世間体(フランチャイズ・リスク)もプランニングにあたって考慮しなければならないこともあるでしょう。

国際税務はホント難しいです。

7. 資金借入・配当政策

法人税、源泉所得税に影響します。

(1)国外関連者等からの借入

海外の親会社・関連会社から資金を借り入れたり、それらの信用保証を受けて第三者から借り入れを受けると、いろいろ課税関係が生じます。
支払う利息の決め方については移転価格税制(租税特別措置法66条の4)、利払いに対しては源泉徴収(所得税法212条、161条1項10号)と租税条約、資本に対して株主からの借り入れが大きすぎると過小資本税制(租税特別措置法66条の5)、はたまた、利益に対して支払利息が大きすぎるとアーニング・ストリッピング・ルール(租税特別措置法66条の5の2、66条の5の3)が適用されます。
こうした税制の適用を受けると、せっかく身内から低利で資金調達しても、税金や事務負担の増加によってメリットが減殺されてしまうおそれがあります。

(2)無配継続

特定同族会社(少数の大株主とその関係者が支配している会社)が利益を配当せずに内部留保を厚くすると、留保した利益に特別に高い税率で法人税が追加で課税されます(法人税法67条)。
これは株主が自分の受け取る配当に対する個人所得税の課税を遅らせるために、支配株主としての影響力を行使して会社に配当させていない場合に、会社にペナルティーを与える制度です。
ペナルティーとして上乗せされる税率は最大で20%になります。
配当を遅らせても、その分は将来の配当金支払時または株式譲渡時に株主が所得税の課税を受けますから、一時的に課税を繰り延べる効果しかありません。
それに対して、留保した利益に対するペナルティーは一度払ったら二度と取り戻せませんから、株主の将来の手取り額を永久に減らす効果があります。
所得税の課税繰り延べを防止することが目的の制度ですから、そのつもりがないなら、思わぬペナルティーを受けることがないよう内部留保をプランニングすべきです。
税金だけでなく研究開発・設備投資のための資金繰りや信用格付けのことも考慮したプランニングが必要になるでしょう。

8.利益還元

法人税、源泉所得税に影響します。
会社がもうかるようになって、役員、社会、株主に利益を還元するのは良いことです。
が、これらもやり方次第によっては税額や申告・納税のコストを増やします。
税務上「効率の良い」利益還元の方法を検討すべきです。

(1)役員報酬

役員に対する給与を「利益処分」によらず「経費」として支給する場合、そのうち一部は損金(税務上の経費)として認めてもらえないことがあります。
役員給与の損金不算入(法人税法34条)という制度があるためです。
賞与など不定期に支払う役員報酬、定期に支払うものでも「相場」を超える「高額な役員報酬」は損金にはできません。
法人税が課税された後の「利益処分」によって役員報酬を支払う場合と平等な取り扱いを目指す制度です。
損金算入が認められるレベルの報酬は「経費」で、それを超える部分は税引き後の「利益処分」で支払うのが法人税の観点からはベストなのですが、報酬をもらう役員の方々のモチベーションにも影響しますので、役員の方がを交えた報酬制度のプランニングが必要かと思われます。
また、役員に対する現物給与やフリンジベネフィットも不定期な役員報酬にカウントされますから、役員さんの「特権」、例えばゴージャスな社宅、社用車、使い放題の交際費、会社の経費で個人的な買い物などしてると、それらにかかった経費は全部損金不算入になります。
会社の正当な業務に不要な経費は一切は負担しないという内規を作って、役員を含む全従業員に平等に適用することをおすすめします。
役員さんだけ特別扱いの制度では、税務上アウトになるおそれもあります。
株式を用いた報酬制度(ストックリワード、ストックオプションなど)の導入にもタックスプランニングが必要です。また、会社の資産を無償や低額で役員に譲渡すると、その資産を時価で役員に譲渡したものとみなされます。
このような場合、会社の法人税・消費税・源泉所得税に影響しますし、役員さん自身の所得税の申告にも影響します。
気を付けましょう。

(2)寄付金

公的な団体や公益性の高い団体に対する寄付金は損金になりますが、そうでない寄付金は一定の限度額の範囲内でなければ損金になりません(法人税法37条)。
寄付金の損金算入限度額は各事業年度の所得(寄付金支出前の金額)と期末資本金等(資本剰余金を含む)に応じて決まります。
税務上全額損金とならない相手先に対する寄付金は、限度額に余裕がある年にできるようプランニングをすべきです。
また、取引先、関連会社、役員・従業員に対する債権を放棄することも「寄付」として取り扱われます。
相場を大幅に下回る値段で棚卸資産や会社の資産を譲渡する場合は、相場との差額が「寄付」になります。
これらも、限度額の範囲内であれば損金になりますから、債権放棄や低額で会社の資産を処分したいときは、待てるなら限度額の余裕がでる年まで待った方がよいでしょう。

(3)配当金の支払い

支払い時に所得税の源泉徴収が必要です(所得税法212条、161条1項9号、174条2号)。
源泉徴収し忘れると会社ガペナルティーを受けます。
源泉所得税相当額を株主から回収するために説明したり謝罪するのも大変です。
海外の株主に対する配当は、株主の居住国によっては租税条約の適用があります。
配当の支払い前に必要な手続きがすませておかないと、租税条約の恩典を受けられませんから、外国人株主からクレームがくるかもしれません。

配当の支払い前に源泉所得税の課税関係をしっかり確認する体制が必要です。

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このシリーズは今回で終了です。
思いがけず長文になってしまいました。
最後まで読んでいただいた方、おつかれさまでした。

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