Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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「所得」と「利益」はどう違う?

所得税・法人税は「所得」に課税される税金です。
「所得」とは「もうけ」のことです。
一方、会計用語あるいは日常語としての「利益」も「もうけ」を意味します。
これら二つの「もうけ」は同じなのか、違うのか?
経理の知識がそれほどなくても、そんな違いを気にしたことがある方はけっこう鋭いです。

「所得」とは

「所得」は税法や経済学上の概念で、よく「お役所用語」としてお堅い文書に出てきます。
無知だった私はあまり深く考えず、「所得」とは「利益」のかしこまった言い方くらいにしか思っていませんでした。
しかし、「所得」は関連する法律にその計算方法の定めがあり、法律が違えばその内容も微妙に異なります。
例えば、法人税法では「益金の額から損金の額を控除して」求めた金額を「所得」とする一般規定がありますが、所得税法では10種類の所得区分ごとに「総収入金額から必要経費を控除した額」とか「収入金額」を所得とするよう個別に規定しています。
このため、同じ1万円の「もうけ」があっても、そのうちいくらが実際に課税される「所得」になるかは、法人と個人で異なることがあります。
ちなみに経済学用語の「所得」は国民・企業が産み出した「付加価値」の総額を意味します。

「利益」とは

会計上の「利益」は収入(収益)から経費(費用)を引いた残額のことです。
この「収入ー経費=利益」という計算式は個人・法人に共通する基本ルールですが、法人の収入・経費(法人の場合は収益・費用)については、これらを認識する時期や方法について厳格なルール(企業会計原則、会社法計算規則、金融商品取引法、国際会計基準など)が適用されます。
例えば、保有している有価証券(株や債券など)が値上がりしようと値下がりしようと、それを売却しないかぎり個人が「利益」を認識する必要はありませんが、法人の場合は実際に売却していなくても期末時点での値上がり・値下がりを「利益」または「損失」として認識するのが原則です。

「所得」と「利益」はどう違う?

では、税法上の「所得」と会計上の「利益」はどう違うのでしょうか?
また、なぜ違うのでしょうか?

所得税・法人税は課税ベースとなる「課税所得」を算定するため、会計は株主・債権者といった企業の利害関係者に対して事業の「結果」を報告するために、それぞれの目的にふさわしい「もうけ」を計算することを求めています。

ものすごく簡単にいうと、税法はできるだけ早めに、多めに「もうけ」がでるような計算をさせたがります。
会計は、費用の金額や支払義務がきっちり確定していなくても、その金額を合理的に見積もれる限り、できるだけ関連する収益と同じタイミングで費用認識させようとします(費用収益対応の原則)。
一方、税法上の収入(収益)の認識基準は会計と比較してもそう大きくは違わないのですが、経費(費用)についてはその支払金額と支払義務が確実になるまで認識させません。

このように収益よりも遅れて費用が認識される結果、「所得」が早めに認識されることになります。

また、会計上経費(費用)と認識されていても、税務上これを否認することもあります。
例えば、役員報酬、交際費、寄付金はいずれも会計上は経費(費用)として認識すべきですが、税法はこれをそのまま必要経費・損金(法人税法上のの費用)として認めません。
所得がでて課税されるくらいなら、派手に経費を使って所得を減らしてしまえっ!というような発想をけん制するためです。
このような発想で使われる経費は「冗費」と呼ばれます。
冗費がある場合は、会計上の「利益」よりも多めに「所得」が認識されることになります。

もっとも、政策的・課税技術上の配慮から、会計上収入(収益)とされているものが、税法上の収入金額・益金(法人税法上の収益)から除かれたり、認識時期を遅らせる(繰り延べる)こともあります。
このような場合は、「利益」よりも少なめに、遅れて「所得」が認識されることになります。
「所得」と「利益」の間にはこのような違いがあるのです。

法人の場合、違っても「いいんです」!

法人税法は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」にしたがって課税所得を計算するよう規定しています(法人税法22条4項)。
これは、決算上の「利益」と「所得」をパラレルに計算させるのではなく、決算上の利益をベースに税法と企業会計上の「基準」とで相いれない部分について申告書上で調整しながら所得を算定させようという考え方の現れです。
ちなみに、このような考え方を「確定決算主義」といいます。

先日のブログ「決算書は誰のために作る?」のおさらいになりますが、税法にはこの「基準」とおりに課税所得を計算させない規定(いわゆる「別段の定め」)がいくつもあります。
したがって、会社法・商法に従って作成された決算書上の利益金額がそのまま課税所得金額になることはむしろ稀です。
確定決算主義を採る我が国だけでなく、大抵の国では会計上の利益と課税所得が違うのが普通です。

個人の場合は独自に計算

一方、個人の所得計算については確定決算主義を貫徹せず「できる人だけ国が定めた様式で申告用の決算書を作ってね」というスタンスをとっています。
そのため、決算書上の「利益」を調整して「所得」を算定するのではなく、帳簿をもとに「収入」と「必要経費」を集計させて、両者の差額として「所得」を計算する方式をとっています。

***
ヤマグチは新卒一年目に社外の講座で法人税の基礎を教わっているはずなのですが、「所得」と「利益」の違いをよく理解しないまま仕事をしていました。
一般的な経理事務をしているうちはあまり問題なかったのですが、法人税に影響する仕事を担当するようになって、「所得」金額を使うべきところ「利益」金額をもとに計算して大間違いをしたことがあります。
講座をちゃんと聞いていなかったことがバレバレです。
オガワ部長。あの時はすみませんでした。
あれから30年。恥ずかしながら自分は今税理士をしております。

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