Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

人の「死」と「税金」

先週のことですが、叔母の葬儀に参列してきました。
享年92歳。百まで生きるのではないかと思えるタフな女性でしたが、さすがに寄る年波には勝てなかったようです。

相続税だけでない

日本で暮らす人生は税金で満ちております。
誕生によって大抵は誰かの扶養控除の対象になり、子供頃からお店で消費税を払い、働くようになれば所得税・住民税、マイホームを手に入れれば不動産取得税・固定資産税を納め、死んで誰かに一定額以上の財産を残せばそれが相続税の対象となります。
近ごろ相続税の免税点が引き下げられたため、実際に相続税の申告・納税が必要になる相続人の割合が増えています。
今まで以上に「相続税」と人生のかかわりが深くなりますが、その影で昔から忘れられがちなのが人の「死」と所得税の「確定申告」です。

死んでも「確定申告」

所得税にも免税点があります。
よく「収入が103万円超えたら所得税がかかるようになる」と言われます。
これは給与所得控除の最低額65万円と基礎控除38万円の合計103万円から由来するお話で、会社勤めやパート・アルバイトの方の「給与所得」だけの免税点です。
他に「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「退職所得」「一時所得」「譲渡所得」「雑所得」のいずれかがあれば、給与所得が103万円以下でも所得税の確定申告の要否を検討しなければなりません。
亡くなった方もその年の1月1日から亡くなられた日までに生じた所得が免税点を超えれば所得税の確定申告が必要です。
といっても、亡くなったご本人が申告するのは不可能ですから、相続人・包括受遺者(亡くなった方の財産を引き継ぐ人)が本人の代わりに確定申告(準確定申告)をすることになってます。
だれも財産を引き継ぐ人がいない場合は、遺された財産に「相続財産法人」という法人格が与えられ、相続財産法人が故人に代わって準確定申告をします。
このように、亡くなる日までの所得にもきっちり所得税が課税される仕組みが用意されているのです。
まさに「ゆりかごから墓場まで」税金がついてきます。

相続人の共同責任

遺された相続人・受遺者は共同して故人のために所得税の準確定申告・納税の義務を負いますが、これを全うすることはけっこう大変です。
とくに故人が個人事業者であった場合、事業にかかわっていなかった相続人らが故人の事業所得を(場合によってが消費税の申告額も)計算するのは大変です。
とくに帳簿や領収書などの証憑がきちんと整理されていない場合は、生前の足跡をたどる刑事か探偵並みの推理力を要することでしょう。
人はいつ何時どのように死を迎えるか予想できないのが普通です。
死後の準確定申告まで想定して日頃から準備をされている方は稀です。
私自身はクラウド会計を利用して可能な限りタイムリーに帳簿をつけるようにしていますが、それでも、それを見た家族が期限まで(普通は死亡日の翌日から4か月以内)に申告するのは大変だろうと思います。
死んだ後の申告まで心配しながら亡くなった方は「墓場まで」どころか「あの世まで」税金を引きずることになります。

そんなのなんだかイヤですね。

***

叔母の葬儀のため宮崎に向かう機上から富士山がよく見えました。
かつて叔母が住んでいた富士市(静岡県)の家からも富士山が見えたことを急に思い出しました。
おばちゃん、長い人生お疲れ様でした。
あなたは準確定申告不要です。
ゆっくりお休みください。

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