Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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「居住者・非居住者」と「内国法人・外国法人」

法律の世界では「自然人」と「法人」という概念があります。
「自然人」とは「生まれながらの人」、つまり我々人間のことです。
「法人」とは自然人以外のもので「法律上の権利義務の主体」とされているものです(詳しくはブログ「マンション屋上のアンテナと管理組合と税務上の『法人』」をご参照ください)。

所得税・法人税法の世界では自然人を「居住者」と「非居住者」、法人を「内国法人」と「外国法人」に区別して異なるルールを適用する場面があります。
なんででしょう?
実はそれぞれ日本で課税を受ける所得の範囲が違っているんです。
今回は所得税の課税範囲がどう違ってくるかを概説いたします。

1. 居住者とは

まず、「居住者」とは国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人のことです(所得税法(以下「所法」)2条3号)。
居所とは住所以外にある生活の拠点といった意味です。
たとえば、国内で住民登録をしていない人が身を寄せているお宅とかホテルなどです。
「日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす」という民法の規定(民法23条2項)に従った取り扱いです。

注意すべきは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人は「非永住者」という独自の取り扱いを受けることです(所法2条4号)。
日本国籍を有している人は何十年も日本を離れていても帰国すれば即「居住者」扱いですが、外国籍の人は「過去10年以内に通算5年」日本に住むまでは「居住者ただし非永住者」というステータスになります。
この「過去10年以内に通算5年」を超えると外国籍の人もめでたく(?)ただの「居住者」になります。

2. 非居住者とは

次に、「非居住者」とは居住者以外の個人をいいます(所法2条5号)。
つまり、居住者でも非永住者でもない人はみんな「非居住者」です。
ここでは国籍は無関係です。
日本人・外国人を問わず日本に住んだことがあっても現時点で国内に住所・居所がなければ即「非居住者」です。
したがって、日本の土を一度も踏んだことがない外国人はもちろん、国外に引っ越した人はすべからく非居住者です。

3. 内国法人とは

国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいいます(所法2条6号)。
「本店」とは会社の本店(本社)のことです。
「主たる事務所」とは会社以外の法人(社団法人・財団法人、人格のない社団等)の主たる事務所のことです。

4. 外国法人とは

内国法人以外の法人のことです(所法2条7号)。

5. 課税範囲の違い

(1)居住者

どこで所得を得ようと、そのすべてが日本で所得税の課税対象になります(所法7条1項1号)。
たとえば不動産を人に貸している居住者は、その不動産が日本にあろうが外国にあろうが、その賃料収入は日本で課税対象になります。

(2)非永住者

①「国外源泉所得」以外の所得
②「国外源泉所得」のうち国内で支払われ、又は国外から送金されたもの
の二種類の所得が課税対象になります(所法7条1項2号)。
逆にいうと、課税されない部分は、「国外源泉所得」のうち国外で支払われ国内に送金されていないものです。
ここにいう「国外源泉所得」とは、簡単にいうと国外での事業や国外にある資産の運用・保有・譲渡などによって得た所得のことです。
例えば、日本に移り住んで間もない外国人が母国に残した留守宅を賃貸すると、その賃料は国外源泉所得になります。
その賃料が日本に送金されると上記②に該当し日本の所得税が課税されますが、現地の銀行口座で支払を受けたままなら①にも②にも該当しないため課税されません。
非永住者であるうちは、余計なお金は日本に持ち込まない方がいいですね。

(3)非居住者

「国内源泉所得」の一部が課税されます。
「国内源泉所得」とは「国外源泉所得」のほぼ裏返しで、国内での事業や国内にある資産の運用・保有・譲渡などによって得た所得のことです。
非居住者の場合、国外源泉所得は全く課税されません。
国内源泉所得についても課税対象は限定されており(所法7条1項3号)、おおまかに以下の2種類の所得に限られます。
①国内の「恒久的施設」を通じて行う事業の所得(所法164条1項)
②国内に「恒久的施設」がなくても比較的手軽に得られる所得(国内不動産の譲渡所得・賃料、国内株式の配当・国内公社債の利子など。所法164条2項)。

「恒久的施設」とは、支店、工場、建設作業場等、一定の「代理人」のことです。
英語でPermanent Establishmentといい、日本語でも略してPEと呼ばれます。
ここで注意が必要なのは「代理人」です。
支店などの事業を遂行するための物的施設がPEに該当するのはわかりやすいのですが、非居住者のために契約締結できる権限を与えられている人的施設(自然人・法人)もPEになりえます。

国内にPEがあると上記①と②の全部が、ない場合は②の一部のみが課税対象になります。
②の所得に対する所得税の大半は源泉徴収という方法で課税されます(所法212条1項)。
いわゆる「天引き」ですね(詳しくはブログ「源泉徴収について(1)」をご参照ください)。
②にはパテント・ノウハウなどの知的財産権や商標権、意匠権などの使用料(いわゆるロイヤルティー)も含まれますのでご注意ください。

(4)内国法人

国内において支払われる一定の所得だけが課税されます(所法7条1項4号)。
具体的には利子、配当など資金運用の果実など受動的な所得に限定して課税しています(所法174条各号)。
「馬主が受ける競馬の賞金」が課税対象になっているのがおもしろいです(同条10号)。
法人が所有する競走馬が多いということでしょうかね?
内国法人に対する所得税の課税方法は源泉徴収です(所法212条3項)。
法人の所得には法人税が課されますので、内国法人に対する所得税の源泉徴収は補完的なものといえます。
所得税と法人税の二重課税は法人税の確定申告で調整される仕組みになっています。
したがって、所得税の確定申告は不要です。

(5)外国法人

「国内源泉所得」の一部が課税されます(所法7条1項5号)。
内国法人よりやや課税範囲は広めですが、国内不動産の譲渡所得・賃料、国内株式の配当・国内公社債の利子など受動的な所得が中心です。
課税方法は源泉徴収です(所法212条1項)。
非居住者の場合と同様、ロイヤルティーも源泉徴収の対象に含まれますのでご注意ください。
なお、源泉徴収の対象となる所得のうち、外国法人の国内PEに支払われるものは一定の要件のもとに源泉徴収が免除されることがあります(所法180条)。

 

***
日本にPEがない非居住者・外国法人に対する所得税課税は源泉徴収だけが頼りです。
したがって、源泉徴収義務者(所得の支払者)に対する税務署等のチェックも厳しいです。
また、租税条約を適用できる非居住者・外国法人に対する支払については源泉税率が軽減・免除される場合がありますが、手続要件を満たしていない場合は税務署からダメ出しされます(詳しくはブログ「源泉徴収について(3)」をご参照ください)。
国外送金がある場合は源泉徴収もれがないかお気をつけください。

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