Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

マンション屋上のアンテナと管理組合と税務上の「法人」

「法人」といえば「会社」を連想しますよね。
でも、「会社」以外にも民事法上の「法人」はいろいろあるんです。

「法人」とは

法人の対義語は「自然人」です。
自然人とは我々のように「生まれながらの人」、つまりは「個人」のことです。
これに対して法人は、人為的につくられた団体ではあるものの法律上「個人」と同じような人格を与えられたものをいいます。
ここにいう「人格」とは「性格」「ひととなり」のことではなく、契約などの取引行為、訴訟を提起するなどの訴訟行為を法律上一人の「人」として有効に行うことができる能力のことです。
法人は自然人や財産が集まって組織された団体ですから、本来は構成員や財産から離れて一人の「人」として独立に取引や訴訟を行うことはできません。

株式会社は「株主」という自然人が、合同・合名・合資会社といった持分会社は「社員」と呼ばれる出資者・経営者(こちらも自然人)が集まって組織された団体です。
このように自然人が集まって組織された団体を「社団」といいます。
「会社」は会社法にもとづいて組織され、株主・社員から離れた独立の「人格」を与えられた特別な社団の呼び名です。
このように法律によって与えられる「人格」を「法人格」といいます。

会社以外の社団や一定の財産が集まって組織される「財団」にも法人格が与えられるものがあります。
「一般財団法人及び一般社団法人に関する法律」にもとづいて組織された社団・財団には法人格が与えられます。

このように「法」の下で「人」並みに扱ってもらえる団体が「法人」なのです。

「人格のない社団等」

法律に基づかず任意に人や財産が集まっただけでは「法人」になりません。
たとえば、学校や会社のサークル・同好会であっても一定の法律の要件を満たす形で組織・運営されれば法人格を認められる可能性がありますが、ただ気の合う仲間が自然に集まって行動しているだけでは法人にはなりません。
このように法人格がないままの団体は「人格のない社団等」と呼ばれ、法律上の法人とは区別しています。

法人でも個人でもない「人格のない社団等」の取り扱いは適用される法律によって異なります。
所得税法(4条)、法人税法(3条)、消費税法(3条)は法人として、相続税法(66条)は個人として取り扱うことにしています。
このように法律は、目的に応じて「人格のない社団等」の取り扱いを変えているのです。

会社でなくても法人税の申告が必要な場合も

会社、一般社団法人、一般財団法人のように法律に従って設立された「社団」には民事法上法人格が与えられます。
これら法人格のある社団は原則として法人税の申告が必要になります。

その他の社団・財団(人格のない社団等)には民事法上法人格は与えられませんが、法人税法上「法人」とみなされます。
そして、「継続的に」「収益事業」を行う場合は、会社と同様に「法人」として法人税の確定申告書を毎期税務署に提出する必要があります(法人税法4条1項)。

近年ではマンション管理組合が法人税の無申告を税務署から指摘されるケースが多いようです。
マンションの屋上に携帯電話用設備(アンテナ、中継機器など)を設置させて、管理組合が携帯電話会社からその対価を受け取ると継続的に収益事業を行っていることになります。
また、住民以外に駐車場等の付帯設備を有償で使用させている場合も継続的収益事業にあたります。
このことに気づいていない管理組合はまだまだ多いと思います。

収益事業を申告するとして、その所得計算にも難しさがあります。
マンションの共用部分を第三者に使用させた場合、その収益を管理組合のものとするのが申告上の一般的取り扱いのようですが、その収益に対応する費用をどう対応させるかが問題になりがちのようです。
マンション管理組合は住民によって構成される社団ですが、マンションの共用部分は住民による共有物であって、管理組合固有の財産ではありません。
そうなると、収益事業に使用する共用部分の減価償却費は住民が負担すべきものであり、理屈の上では管理組合の費用としてカウントできないということになります。
結果的に管理組合は減価償却費を差し引く前の収益をまるまる所得として申告することになり、法人税の負担が割高になります。
収益事業の規模が大きくなる場合には、管理組合レベルで費用・収益を対応できるようなんらかの仕組みを考える必要があろうかと思います。

 

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かく言うヤマグチも自分のマンションの屋上にアンテナがあるか未確認です。
こんど見てみます。

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