Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

税務上の「寄付金」

会計上「費用」だけど税務上素直に「必要経費」や「損金」にならないものシリーズ第二弾!
今回は「寄付金」についてご紹介します。

「交際費」とどう違う?

前回のブログ「税務上の『交際費』」では、「事業上の見返りを期待して」支出する接待・贈与の費用が「交際費」だと申し上げました。
寄付金も他人にモノやお金をあげるという点では交際費と同じですが、「見返り」を一切期待しないという点で異なります。
したがって、支出先が慈善団体などであっても、何らかの反対給付を受けてその対価として支払うお金は「寄付金」にはなりません。
例えば、慈善団体のバザーでモノを買えば、その代金として支払ったお金は「寄付金」ではなく、費用または資産の購入です。
 
団体の活動のために一定額を「寄付」すると反対給付を受けられる「支援プログラム」などもあります。
例えば、音楽活動を支援するあるNPO法人は一口(1万円)以上の「年会費」を払った「個人会員」に対して、年一回その法人が主催するコンサートの招待券(ペア)1枚とドリンク券2枚を会員特典として配布しています。
「法人会員」に対しては口数に応じて最大で招待券(シングル)4枚とドリンク券30枚が配布されます。
このような特典付きの「会員」になるために支払った「年会費」は税務上の「寄付金」にはなりませんから、注意が必要です。
ちなみに、このNPO法人は同時に特典なしの「寄付会員」というステータスでの会員も募集しており、こちらについての拠出額(3000円以上1000円単位)は税務上の「寄付金」となる旨の説明がありました。
特典や謝礼がつく「寄付」は税務上の「寄付金」にならない可能性が高いので、拠出先の団体に確認されることをおすすめします。
 

税務上の優遇措置は条件付

寄付は「持てる者」から「持たざる者」への利益の配分という面もありますが、公的機関では手がまわらない支援を補完する社会インフラの維持費という側面もあります。
寄付を通じて社会に利益還元するという個人・法人の活動は尊ぶべきですが、なんでも税務上の「必要経費」「損金」にしていては、税収が確保できなくなるおそれがあります。
「税金にもっていかれるくらいなら、自分が支援している団体に全部寄付しちゃおう!」と考える人がいるからです。
ちゃんと社会の役にたっている団体への寄付であれば、税金に代わる役立つお金になりますから、社会全体からみればこれを「必要経費」「損金」にしても問題なさそうです。
しかし、世の中いろいろな団体やNPO法人があり、中には本当に世の中のお役に立っているのかわかりにくいものがあるのも事実です。
 
そこで、団体の活動を所管する役所が、団体の活動内容を確認して公的活動(行政活動、または行政の代わりになる活動)、公益活動(世の中に利益になる活動)に従事してといえるか認定しています。
税務上は、この認定を得ている団体・法人に対する寄付だけを必要経費(厳密には「寄付金控除」)・損金として認めることにしています。
したがって、寄付先が「NPO法人」とか「非営利団体」を名乗っていても、実際に認定を受けているか確認することなく確定申告で「寄付金控除」や「損金算入」することは危険です。
 

個人が寄付をした場合

所得税法が規定する一定の寄付金について「寄付金控除」が認められます。
寄付した金額(控除前の総課税所得金額の40%が上限)マイナス2000円を寄付した年の総課税所得から控除できる制度です。
その他の寄付金については税務上優遇措置はありません。
所得税法が規定する「一定の寄付金」の概要は国税庁のHPで公表されています。
 
また、「一定の寄付金」のうち種類によっては寄付金控除(所得控除)に代えて「税額控除」を選択できるものがあります。
どちらが有利かは寄付をした人に実際に適用される所得税率、控除前の税額によって変わってきますので、申告前に税額の試算が必要です。
 

法人が寄付をした場合

法人の場合、寄付金の種類をおおまかに以下のように3分類で考えます。
  1. 国や地方公共団体に対する寄附金および指定寄付金=全額損金算入(上限なし)
  2. 特定公益増進法人、特定公益信託(その信託財産とするため)、認定NPO法人等に対する寄付金(指定寄付金に該当するものを除く)=一定の限度額(多め)の範囲内で損金算入
  3. 上記以外の寄付金(一般寄付金)=一定の限度額(少なめ)の範囲内で損金算入
個人の場合と違って、「一定」に該当しない「一般寄付金」についても限度額の範囲内で損金算入できる「優しい」制度になっています。
指定寄付金とは財務大臣が指定した寄付金のことです。
指定には包括指定と個別指定があります。
この手の寄付金を募集している団体は、募集にあたって何らかの方法で指定寄付金に該当することを明らかにしていると思います。
上記の3分類のうち①と②に該当しそうな寄付金については、寄付先に確認したほうが無難です。
 
法人の損金算入限度額は資本金と所得金額をベースに決まる仕組みになっています。
具体的な計算式については以下の国税庁のサイトをご参照ください。
 

 

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ふるさと納税も寄付金控除(税額控除)の対象です。
大半が反対給付(お礼の品)ありにもかかわらず、アレを寄付金と呼ぶのは如何なものかと思います。
思うんですが、お礼につられて去年も一昨年もふるさと納税しました。
ヤマグチのお気に入りは西伊豆町の「夕陽のマドレーヌ」です。

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