Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

株主総会 in 品川

本日6/28は上場会社の株主総会の集中日です。

大型買収の是非を巡って紛糾しそうな武田薬品工業さん(証券コード4502)の総会を見届けたかったのですが、大阪での総会が長引くと東京での夕方の用事に間に合わないおそれがあります。
ということで、代わりというわけではないんですが、東京品川で開催のANAホールディングスさん(9202)の総会に行ってまいりました。
ヤマグチにとっていろいろ「初めて」がいっぱいの株主総会で、とても勉強になりました。
お土産ないのは残念でしたが、今回はちゃんと招集通知の「おみやげなし」の事前告知に気づいてましたから心の準備はできてました。

初めての大型総会!

会場はグランドプリンスホテル新高輪という大型ホテルの大ホールでした。
駆り出されている社員さんもいっぱいです。
入場受付も空港でのチェックインのようにスムーズです。
さすが航空会社!ナイス!
広い会場が人でいっぱいです。
丸善さん吉牛さんの総会よりずっと大規模です。

まずは「お詫び」も初めて!

奇しくも総会前夜の6/27にANA629便(羽田→鹿児島)でインシデントがありました。
機内気圧の異常で行き先を変えて関西国際空港に降りたそうです。
総会の冒頭で取締役のみなさん一同で「申し訳ありません」です。
ま、大事に至らなくて何よりでしたが、予定が狂ってしまった人にとっては「責任者出てこい!」ですよね。
昨夜の629便の乗客の方が会場にいたとは思いませんけど、低姿勢でのスタートでした。

「議長!動議!」も初めて!

出席株主が多ければ、質疑応答も長くなり、総会の総時間は2時間超えでした。
ヤマグチも連結決算書に注記事項で質問したいことがあったんですが、今回はあきらめました。
そろそろ終わるかなというころに、ある株主の方から1号議案「剰余金の処分の件」(1株につき配当60円)に対する「動議」が提出されました。
「増益なのに配当性向が低すぎる」という趣旨でお話が始まり、一部の株主さんからも拍手で同調を得ていたのですが、肝心な具体的修正議案がなかなかでてきません。
結局、動議として認めらず、原案が賛成多数で承認されました。
おそらく「原案を修正し配当を1株○○円とせよ」と提案すれば動議として認められたのでしょうが、どのみち原案が先に可決してしまえば、修正動議は否決されることになるので、本日のような大型総会で一般株主からの動議が可決する見込みはまずないと思います。

意外と少ないリース資産

招集通知の事業報告をみて気が付いたのはANAさんは航空機リースをあまり活用せず、自社所有が多いということです。
意外でした。
連結貸借対照表(B/S)を見ると有形固定資産に計上されている航空機は約1兆円、リース資産は72億円です(いずれも帳簿価額ベース)。

ヤマグチが新卒で勤めていたリース会社は航空機リースを多く手掛けていましたが、確かに借り手のほとんどは海外のエアラインでした。
あれから30年ほど経ちますが、ANAさんは今でも「自社所有」派なんですね。
JALさん(9201)にいたってはB/Sの資産の部に「リース資産」の表示すらありません。
おそらく金額の重要性がないので「その他」の有形固定資産に含まれているのでしょう。

「オペレーティング・リース」と「ファイナンス・リース」

リースは「レンタル」に近いオペレーティング・リースと、「自社所有」に近いファイナンス・リースに大別できます。
オペレーティング・リースの借り手は、基本的には借りたモノは自分のモノにはなりません。
借りている期間も比較的短めだったり、モノの耐用年数とは無関係に決まります。

これに対してファイナンス・リースは、モノの耐用年数をベースにリース期間が決まり、モノの取得代金をベースにリース期間中のリース料の総額が決まります。
そして、リース期間中に借り手側から解約ができない契約になっています。
つまり、契約上は賃借していても、経済的にはリース会社からお金を借りてモノを買い、元利金を「リース料」として支払っているようなものです。
そのため、日本を含む主要国の会計基準や国際会計基準は、ファイナンス・リースで借りているモノを「リース資産」として資産計上し、規則的に減価償却するよう定めています。

ヤマグチがリース会社に勤めていたころに、日本でもファイナンス・リースの資産計上・減価償却が検討されはじめました。
資産計上しなくてもよい「オフバランス」効果がリース取引のセールスポイントでしたから、当時のリース事業協会の会員会社は会計基準の改訂に猛反対でした。
しかし、重要な事業資産がリースによってオフバランス化されることは、決算書をみる投資家の判断を誤らせかねないという問題がすでに日本でも認識されていましたから、改訂に向けた国際的な情勢には逆らえませんでした。

ということで、現在の日本ではファイナンスリースは自社所有資産と同じようにB/Sに計上することになりますから、どうせなら自社所有がいいということになるのかもしれません。
特に航空機は、オペレーティング・リースといえども、整備、点検、万が一のときのリスクを負うのは運航者である借り手になるように契約書が作られるのが普通です。
そういう事情もあって、航空会社にとってファイナンス・リースはメリットがないのかもしれません。

税務上の調整が必要になることも

リース取引については税法上「別段の定め」があります。
基本的には会計上の取り扱いと同じなのですが、契約条件によっては会計と税務とで食い違いが生じて、確定申告書上で調整が必要になることがあります。
事業用資産をリースでご利用の方は、確定申告前に顧問税理士さんやリース会社の担当者に確認されることをおすすめします。

 

***
明日は11時に宮崎で打ち合わせです。
ANA601便(9:20着)現地にで向かいます。
ちゃんと定刻通りに着きますように…
遅れたら「責任者出てこい!」です。

コメント (1)
  1. けんけん より:

    aviationをまとめてる、銀行もあるから、航空機を買う資金を調達する必要がある会社にはリースもそれなりに意味があるのかも。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください