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消費税はその名が示すように「消費」にかかる税金です。
もう少し正確にいうと「消費」される「付加価値」に課す税金です。
したがって、税金を負担すべきは消費者です。
われわれ消費者がお店でモノを買う時、あるいは何等かのサービスをうけて代金を払う時に消費税を負担するのは、われわれがモノやサービスを消費した(あるいはこれから消費する)からなのです。
ところが、一般消費者は消費税を負担することはあっても、それを国に納付することはありません。
消費者が負担した消費税は、モノやサービスを販売した個人事業者や会社が一時的に預かって、それを国に納付しているのです。
つまり、個人事業者や会社のように「事業」としてモノやサービスを提供している事業者が納税義務を負っているのです。
このように税金を負担する人(担税者)と納付する人(納税義務者)が異なる税金を「間接税」といいます。
消費税は広く消費一般に課税する税金です。
本来はすべての事業者を納税事務者にして、広く一般から集めた消費税を国に納付させるべきです。
しかし、事業主が一人で切り盛りしている零細企業については、消費税の申告・納税の事務が負担になると思われることから、消費税法(以下「法」)は「基準期間」における「課税売上」が1千万円以下の小規模事業者の納税義務を免除しています(法9条1項)。
「基準期間」とは以下の期間をいいます(法2条14号)。
事業者 | 基準期間 | |
個人事業者 | その年の前々年 | |
法人 | その事業年度が1年である法人 | その事業年度の前々事業年度 |
その事業年度が1年未満である法人 | その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した事業年度 |
「課税売上」とは日本国内で行ったモノやサービスの販売の売上げのことです。
消費税法が特に消費税を非課税にすると決めているモノやサービスの代金以外はすべて「課税売上」になるとお考えいただいて結構です。非課税となる売上げは土地・有価証券の譲渡代金、受取利息などです。
日本から海外へモノを輸出したり、日本から海外に提供するサービスも「課税売上」にカウントします。
それぞれの年(個人事業者の場合)や事業年度(法人の場合)に納税義務者になるかどうかは、基準期間という過去の一定期間中の課税売上高の実績をみて判断しなければならない仕組みになっています。
この仕組みを正しく理解していなかったり、課税売上を正確に把握できていないために、自分が納税義務者になっていることに気づいていない事業者がそれなりの数いるようです。
所得税・法人の申告に税理士が関与していれば、そのことを指摘できるはずなのですが、事業者さんが自分で申告をしている場合は、なにかきっかけ(税務調査など)がないと気づかない可能性が高いです。
小規模事業者の納税義務免除には特例が数多く設けられています。
納税義務の負担が重くなる零細企業を税制面からサポートするという制度趣旨からみて、必要ない場合にまで納税義務を免除しないための措置です。
そのため、基準期間の売上げ実績が1千万円を超えたことがなくても納税義務が免除されないことがありえます。
以下のようなケースに該当するときは、知らないうちに納税義務者になっている可能性がありますから、要注意です。
気になる方はこちらも参考にしてみてください。
2023年10月から消費税の申告の仕組みが大きく変わる予定です。
これまでは、事業者が作成した会計帳簿をベースに申告書を作成する仕組み(帳簿方式)でしたが、2023年からはインボイス方式と呼ばれる仕組みに従って申告することになります。
「インボイス」とは請求書のことです。
インボイス方式はEUの付加価値税(VAT)で採用されている課税方式で、インボイスに記載されたVATの金額をもとに課税事業者に税務申告させる仕組みです。
日本では「登録事業者」として税務署に登録した事業者が発行する「適格請求書等」と呼ばれるインボイスを用います。
それ以外の請求書は消費税の申告には使えません。
これまでの帳簿方式の下では、経理業務まで十分に人手をさけない小規模事業者の事務負担に配慮して納税義務の免除制度が認められてきました。
インボイス方式移行後も小規模事業者の納税義務免除制度は残りますが、納税義務を免除されている事業者(免税事業者)は「登録事業者」にはなれませんので、免税事業者が取引先に発行する請求書は「適格請求書等」になりません。
取引相手が課税事業者の場合、消費税申告に使えない請求書を受け取ることになるので、免税事業者との取引が敬遠されるのではないかという心配の声も聞かれます。
このような制度変更の影響で、取引先からの要請や圧力を受けた小規模事業者が課税事業者を選択するケースが増えるかもしれません。
追い込まれて仕方なしに課税事業者になるよりも、経理体制をととのえて所得税・法人税と消費税の申告を効率的にできるよう準備しておくべきです。
クラウド会計をうまく活用すれば、事業主さんと税理士の二人三脚で実現できると思います。