Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

医療費控除とセルフメディケーション税制

Happy Holiday Season!でございます。
今年もあとわずか。
私もそろそろ自分の確定申告の準備を始めます。
とりあえず、医療費のレシート集計からですね。

ところで「セルフメディケーション税制」ってご存知ですか?
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例版で従来の医療費控除との選択適用となります。
医療費控除と重ねて適用はできませんので、どちらがお得か申告前に見極めが必要です。

医療費控除

対象となる“医療費”には,医師の診察代や医薬品の購入費等が該当します。
医療費控除を適用するには、医療費の「明細書」または医療費「通知書」のいずれかを確定申告書に添付する必要があります。

医療費の明細書

領収書にしたがって、①医療を受けた人の氏名、②病院・薬局など支払先、③医療費の区分(診療・治療、医薬品購入、介護保険サービス、その他)、④支払った金額、⑤生命保険等で補填される金額の5項目を一件ずつ記載します。
こんな明細です。
医療費明細

国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」で申告書を作成するなら、HP上の画面から入力することもできます(注:2018年申告用のHPは2019年1月4日公開予定です)。
領収書の枚数が多い方は、「医療費集計フォーム』を利用した入力が便利です。
「医療費集計フォーム」は支払った医療費を一定の表計算ソフト(エクセルなど)で入力・集計するためのフォーマットです。
「医療費集計フォーム」に入力・保存したデータは、確定申告害等作成コーナーの医療寶控除画面で読み込み、反映することができます。

医療費通知書

「医療費のお知らせ」など健康保険組合から送付されてくる通知書のうち次の6項目が記載されているものです。

  1. 被保険者等の氏名
  2. 療養を受けた年月
  3. 療養を受けた者
  4. 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
  5. 被保険者等が支払った医療費の額
  6. 保険者等の名称

こんな感じのものです。

この通知書に記載されている医療費については「明細書」に一件ずつ記載する必要はなく、通知書の合計額のみを転記することで「明細書」の添付を省略することができます。
6項目のうち1つでも記載が欠けると原則どおり「明細書」を作成する必要があります。
ただし、部分的に表示がない項目(この見本にあるように医療機関名が表示されない可能性があります)については、領収書などをみて自分で補記(書き込み)できれば「通知書」として使ってよいことになっています。
通知書に記載されていない医療費は「明細書」に記載すれば従前どおり医療費控除を適用できます。

「通知書」は確定申告書といっしょに税務署に提出しなければなりません。
そのため、電子申告(e-Tax)で確定申告する場合は、「通知書」を税務署に郵送することになります。
件数にもよりますが、郵送の手間を考えると「医療費集計フォーム」(Excel版)を使って原則どおりの「明細書」に読み込ませてe-Taxで送信してしまった方が早いかもしれません。

医療保険者から「通知書」をデータ(XML形式で電子署名および電子証明書付きに限る)で受け取っている場合は、そのデータファイルを申告データに添付して送信することで「明細書」の作成と「通知書」の郵送を省略できます。
現時点では、XML形式でのデータ提供に対応するかどうかは医療保険者(健保組合など)の任意なので、この方法は万人向けとはいえません。
将来、「マイナポータル」等のマイナンバーのインフラ整備が整い、健康保険の被保険者番号とマイナンバーのひもづけが完了すると、医療費データの提供が進むと思われます。

セルフメディケーション税制

薬局等で販売されている特定一般用医薬品(いわゆるスイッチOTC医薬品)の購入費が対象です。
厚労省のHPで対象品目一覧が公表されています。
メジャーな薬品は確定申告作成コーナーの入力フォームでリスト表示されるそうです。
また、薬局のレシート上も控除対象品目については「★印はセルフメディケーション税制対象商品です」といった表示がされているようです。

保険金等の補填額を除き,12,000円を超える部分の金額(88,000円が限度)を所得金額から控除できます(租税特別措置法41の17の2 )。
もっとも、セルフメディケーション税制はただ該当する薬品を購入しただけでは利用することができず、健康の保持増進と疾病の予防に取り組んでいることが控除の条件とされています。
そのため、確定申告書を提出する際に「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」をしていることを証明する書類として次のようなものを添付する必要があります。

  • インフルエンザの予防接種又は定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)の領収書又は予防接種済証
  • 市区町村のがん検診の領収書又は結果通知表
  • 職場で受けた定期健康診断の結果通知表(「定期健康診断」という名称又は「勤務先(会社等)名称」が記載されている必要があります。)
  • 特定健康診査の領収書又は結果通知表(「特定健康診査」という名称又は「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。)
  • 人間ドックやがん検診をはじめとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知表(「勤務先(会社等)名称」「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。)

電子申告の場合は「一定の取組」について所定の事項を選択・入力→送信することで添付を省略できます。
なお、検診マニアの方には残念ですが、「一定の取組」に要した費用(例えば、人間ドックの受診費用など)は控除の対象となりません。

また、確定申告書に医薬品の購入金額の「明細書」を確定申告書に添付する必要があります。
セルフメディケーション明細 電子申告による場合は、医薬品の領収書から1件ずつ明細に入力しけば添付を省略できます。
購入金額の合計額だけ入力するときは、別途作成した「明細書」を税務署に郵送することになります。
なお、国税庁がエクセルで提供している「医療費集計フォーム」は医療費控除用なのでセルフメディケーション税制には利用できません。

控除額の試算

確定申告書作成コーナーで「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」の控除額の試算ができます(再注:2018年申告用のHPは2019年1月4日公開予定です)。
試算は所得金額に基づきますので、ますは収入金額、各種所得控除額の入力を済ませて所得金額がおおむね確定した後で試算するほうが良いでしょう。

どちらが有利かは個々人の事情(所得金額、医療費の自己負担額など)によりけりですが、すくなくとも医療費控除のハードル(所得の5%または10万円のいずれか少ない金額を超えた部分しか控除できない)を超えられない場合でも、セルフメディケーション税制は使えますから、ドラッグストアのレシートは捨てずにとっておいた方が無難です。
私の世帯では市販薬を年12,000円以上購入することはなさそうですが、ご家族が多い世帯なら可能性は高いでしょう。
医療費控除を取りたい年と重ならないよう、ある年に集中して常備薬の購入・買い替えをするとセルフメディケーション税制の恩恵を受けやすくなると思います。

領収書の保存等

医療費(医療費控除の場合)、医薬品(セルフメディケーション税制の場合)の領収書は確定申告期限から5年間保存が必要です。
この間税務署から提示又は提出を求められることがあります(所得税法120条5項、租税特別措置法41条の17第3項)。
この提示・提出は、求められれば応じなければならないよう法律に規定されていますので、拒否することはできません。

所得税法120条
5 税務署長は、前項の申告書の提出があつた場合において、必要があると認めるときは、当該申告書を提出した者(以下この項において「医療費控除適用者」という。)に対し、当該申告書に係る確定申告期限(当該申告書が国税通則法第61条第1項第2号(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)に規定する還付請求申告書である場合には、当該申告書の提出があつた日)の翌日から起算して5年を経過する日(同日前6月以内に同法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求があつた場合には、当該更正の請求があつた日から6月を経過する日)までの間、前項第1号に掲げる書類に記載された医療費につきこれを領収した者のその領収を証する書類の提示又は提出を求めることができる。この場合において、この項前段の規定による求めがあつたときは、当該医療費控除適用者は、当該書類を提示し、又は提出しなければならない。

実際に税務署から提示等を求められることなど稀だと言われています(私もそう思っていました)が、今年になって身近な友人が提出を求められおり、正直驚きました。
確定申告後しばらくして、提出を求める文書が領収書送付用の封筒とともに税務署から郵送されてきたそうです。
その友人はきちんと領収書を保存していたので、すぐに提出し、7月には「問題なし」という通知とともに領収書が返ってきたそうです。

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クリスマス、忘年会、お正月、新年会と胃袋に(懐にも)厳しいシーズンです。
胃薬でセルフメディケーションできる程度で済むようにご自愛くださいませ。

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