Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

確定申告書等作成コーナー vs 会計freee

ヤマグチは自分の所得税の確定申告を本日済ませました。
もちろん電子申告です。
今回はクラウド会計(freee)を使い始めて初めての確定申告です。
事業と不動産の収支をコツコツ記帳しながら申告作業がどれだけ楽になるか楽しみしていました。
これまで何度もブログで取り上げてきように、年中の記帳とレシートの管理は本当に楽になりました。
この調子で年明けの申告作業も「楽勝」と思いきや、「あらら…」ということがありましたので、そのあたりをご報告いたします。

申告内容

2018年中は①事業、②不動産、③配当(総合課税)、④給与、⑤譲渡(分離課税)の5つの所得がありました。
所得からの控除(所得から差し引かれる金額)は、医療費、社会保険、個人型確定拠出年金(iDeCo)、生命保険、地震保険、配偶者控除、扶養控除と基礎控除です。
税額控除は、配当控除、住宅ローン控除、青色申告特別控除です。

まずは会計freeeでチャレンジ

実際に申告作業をしてみるまでは気が付かないことが多々ありました。
確定申告作業全般についてはユーザーフレンドリーな作りになっており、国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」よりも使い易いデザインです。
しかしながら、
「確定申告書等作成コーナー」にできてもfreeeにはできないことや、freeeならできると期待していたけど実際にはできないことがあるということがわかりました。
私が勝手に期待していた点もありますので、あくまでも参考情報としてみてください。

配当金明細を取り込めない

「確定申告書等作成コーナー」なら配当集計フォーム(エクセル)に入力したデータを読み込めるのですが、freeeだと個別入力しかできないようです(1月17日現在)。
外部データや電子ファイルの取込を得意とするfreeeがデータ読み込みに対応していないとは意外でした。
医療費集計フォームには対応しているので、技術的にできないわけではないと思います。
配当も件数が多いと一度に一件ずつ入力するのは億劫です。
申告時にまとめて読み込ませようと、配当金計算書が届く都度まめにエクセルに入力してきたので、少しがっかりしましたが、常にユーザーからの要望に応えて改良を続けているfreeeさんのことですから、配当集計フォームについても近々対応してくれるのではないかと期待しています。

地代家賃・不動産収入の内訳は手入力

会計freeeの仕訳には「取引先」情報を付記できます。
ひょっとしたら、この「取引先」情報をキーにして「青色申告決算書」中の「地代家賃の内訳」や「不動産所得の収入の内訳」に合計額が自動転記されるのではと期待していたのですが、手入力でした。
物件所在地までは無理でも、賃借人・賃貸人の氏名レベルでの集計はできそうなものです。
これも対応していただけるとうれしいのですが、freeeさんいかがでしょうか?

譲渡所得の内訳書がない

譲渡所得がある場合、確定申告書B第三表の付表として「譲渡所得の内訳書」を作成・添付する必要があります。
freeeでは第三表は直接入力編集(手入力)で作成できますが、「内訳書」までフォームが用意されていません。
したがって、電子申告しても内訳書だけは税務署に別途提出しなければなりません。

会計ツールであるfreeeに完璧な申告書作成機能を期待するのはそもそも酷な話しなので、これは仕方がないと思います。
「確定申告書等作成コーナー」なら内訳書から第三表を作成できますし、内訳書も電信申告で提出できます。
内訳書に記載する取引の件数にもよりますが、譲渡所得がある方は「確定申告書等作成コーナー」を利用した方が楽かもしれません。

損失申告時の損益通算がおかしい?

予めのおことわりですが、この件はfreeeさんに確認中です。
私の使い方の問題かもしれませんが、経常所得がマイナスで譲渡所得がプラスの組み合わせのパターンで損失申告時に作成する第四表で計算する損益通算が「確定申告書等作成コーナー」で作った場合と違っていました。
その結果、「雑損控除、医療費控除及び寄付金控除の計算で使用する所得金額の合計額」も変ってしまい、最終的には医療費控除の金額も変わります。
第四表を直接入力で編集してもページを更新すると元に戻ってしまいます。摩訶不思議です。

【追記:2018年1月24日】

freeeさんから回答をいただきました。
まず、第四表を直接入力で編集するには、確定申告書第一表の「住所など基本情報を編集」で「損失」の計算設定を「手入力」に変更しておく必要がありました。

次に、確定申告書B第4表(1)「1 損失額又は所得金額」の62欄(分離課税の長期譲渡所得)が黒字の場合、同表「2 損益の通算」の62欄への転記は不要なはずなのに、黒字額が転記されてしまうという問題がありました。
これはロジックの不具合なので近日中に修正するそうです。

電子申告アプリがインストールできない?

これもfreeeさんに確認中です。
クラウド会計であるfreeeといえども電子申告するためには国税庁が提供するe-Taxを利用するためのアプリをPCにインストールする必要があります。
「確定申告書類の作成」の「提出の準備をしましょう」からこのアプリをダウンロードしてインストールする運びになっているのですが、私のPCはこんな警告を発してインストールを拒否します。

「コンピューターにセキュリティ上の問題を発生させるため、管理者がこのアプリケーションをブロックしました」なんて言われると躊躇します。
もっとも「管理者」である私がブロックを解除すればインストールできるのでしょうが、どうセキュリティ設定を変更すればよいのか分からないのです。
ということで、残念ながらfreeeを使って電子申告する準備が整っていない状況です。

追記:2018年1月20日

freee電子申告アプリをインストールしようとしてもブロックされてしまいます。
トラブルシューティングでご案内のLauncherApplicationを使ってもブロックされます。
一般的なPCのセキュリティ設定のままではインストールできないのでしょうか?

とfreeeさんに質問したところ、以下のような回答をいただきました。

アプリのインストールについては、一般的なPCのセキュリティでインストールは可能でございます。
ただし、セキュリティの設定とはPC事に異なっておりますので、
セキュリティ内容によってはインストールがブロックされるPCがございます。
その場合は、セキュリティ内容を再度ご確認いただき、アプリのインストールを可能な状態へと変更していただく。
もしくは、別のPCでインストールをお試しいただきご対応をお願い申し上げます。

セキュリティ設定をどう変えればいいのかヒントをもらいたかったのですが、自力でなんとかせよということのようです。
ということで、いろいろググってみた結果、この方法でインストールできました。
あるびす-K-Hamiltonさん、ありがとうございます。助かりました。

ならば「確定申告書等作成コーナー」で…

せっかくfreeeで決算書までできているのでなんとかしたいのですが、譲渡所得の内訳書の件がありますので、今回の申告は「確定申告書等作成コーナー」で行うことにしました。

申告書フォームへの入力作業はfreeeも「確定申告書等作成コーナー」も大差ないという印象を持ちました。
税理士ではない方がご自分で入力するなら、ガイダンスが行き届いているfreeeの方が良いかもしれません。

「確定申告書等作成コーナー」は自分がどの項目を入力すべきか分かっている人には使い易いのですが、そうでない方には「次はどこへ行けばいいの?」と不安にさせる場面があるように思います。
また、使われている文章もトリッキーだったりします。
たとえば、これなんかどう思われます?

私は初見では「特定口座」と「以外」が離れているので、「以外」を見落として「『一般口座』はどこ?」としばらくウロウロしてしまいまいした。
ここは「上場株式等の売却がある(特定口座以外)」とした方が(私のようにそそっかしい人にも)伝わりやすいのではと思うのです。
ちなみにfreeeのガイダンスはこんな風です。

「確定申告書等作成コーナー」には、法令の文言に忠実であろうとするあまり読み手にとってはわかりにくくなっている文章が多いです。
わかりにくそうな用語についてはリンクで解説を見せるなど配慮もしていますが、文書全体が読みにくいとユーザーは戸惑います。
やはりfreeeのように平易で自然な文章の方が私は好きです。

今回の結論

どちらを使った方が作業が楽かは申告内容によります。
以下私見です。

  • 事業所得だけの申告ならfreeeから電子申告した方が手間は減らせます。
  • 配当・譲渡の件数が多くてファイル読み込みを利用したい方は「確定申告書等作成コーナー」を利用したほうがいいでしょう。
    せっかく事業収支をfreeeで記帳しているのに「確定申告書等作成コーナー」でB/S,P/Lを入力するのはちょっと悔しいですが、受取配当を何十件と入力するのに比べればB/S、P/Lを手入力するのは大した手間ではないでしょう。
  • 譲渡所得の内訳書を別送したくないなら「確定申告書等作成コーナー」です。
  • freeeで損失申告をするときは第四表に注意してください。
    私も「確定申告書等作成コーナー」を併用していなかったら違いに気付かなかったかもしれません。

***

電子申告のよいところは、申告期限内なら何度でも提出できることです。
期限内で最後に送信したバージョンが申告書として受理されますので、それ以前に送信したデータの取消しは不要です(いわば上書きされるのと同じ)。

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