昨日は法定調書・給与支払報告書の提出期限でした。
お疲れ様です。
間に合わなかった方もあきらめずに遅れてでも出しましょう。(がんばって!)
昨日、お客様から郵送で税理士報酬の「支払調書」が届きました。
ありがとうございます。
でも、これ、本当は私には送らなくてもよかったんです。
ごめんなさい。
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法定調書には「源泉徴収票」と「支払調書」があります。
どちらも税務署に提出する資料ですが、源泉徴収票は給与等の支払いを受けた人にも「交付しなければならない」と所得税法に定め(所得税法226条1~4項)があるのに対して、支払調書(所得税法225条1項)についてはそのような規定がありません。
したがって、税理士報酬を支払う法人・個人は支払調書を支払先の税理士に交付する必要はありません。
それにもかかわらず、私のお客様のように支払調書を支払先に送っている方は多いようです。
実際、税理士会ですら会員税理士に対する報酬支払いがあると支払調書を送ってくるくらいですから、法律上の義務がないとわかっていても「親切心」から送っている方が大半を占めているのではないかと思われます。
そもそも「調書」とは何でしょう?
ウィキペデイアによると…
- 特定の事象についての調査内容を記載した文書。
- 刑事事件など捜査において、事件の捜査から明らかになった事柄を裁判等で公証するための文書。検察官面前調書など。
- 納税にかかる調書。法定調書
- 栄典の推薦・申請において提出する文書。功績調書。
ということで、法定調書も例示されています。
基本的にはお役所などが調査のために収集・作成、あるいは調査結果を記録した文書ということです。
ちなみに、お役所ではありませんが、会計監査人(公認会計士・監査法人)が監査業務にあたって作成する「監査調書」というものもあります。会計監査人も法令に基づく立場で監査しているので、公的な資料ということで「調書」と呼ばれているのでしょう。
その点、税務署に提出する法定調書は「調書」の王道を行くものであり、とりわけ、法律上税務署のためだけに作成・提出される支払調書は「調書の中の調書」です。
一方、源泉徴収票は税務署に提出したものと同じ内容のものが支払いを受けた本人にも渡されます。
それをもとに所得税の確定申告をしたり、年末調整に誤りがないかをチェックできるので、税務署だけでなく本人のための資料でもあります。
したがって、給与等の支払者から源泉徴収票の交付を受けていない本人は、支払者に対して交付するよう請求する権利がありますし、支払者はこれに応じる義務があります(そもそも、請求されなくても翌年1月末まで本人に交付すべき義務を負っています)。
というものの、個人事業者で「報酬」を得ている人の中には、支払調書が届くのを待って確定申告を始める人も多いようです。
しかしかながら、先述のとおり、支払者には支払調書を本人に交付する法的義務はありませんから、いつまでも支払者の「親切心」を当てにできるとは限りません。
こんな話もあります。
Amazonのアソシエイト・プログラムってご存知ですか?
自分のホームページやブログでアマゾン・ドット・コムの商品を紹介して、それが売れたら紹介料(報酬)がもらえるという仕組みです。
このプログラムに参加してAmazonから報酬をもらっていた人に対して、Amazonは支払調書を交付しましたが、2013年分からは交付を取りやめたそうです。
確かに、大勢のアソシエイトに支払調書を送付するコストは馬鹿になりません。
しかも、法的義務がないことにコストをかけるなど「しっかり者」のAmazonにとっては許されないことでしょうから、この取りやめは当然といえば当然です。
ただし、Amazonのオフィシャルブログにあるように、ちゃんと代替措置をとってくれていますので、決してAmazonが不親切というわけではありません。
Amazonのように支払調書にかわる情報提供をしてくれれば良いのですが、代替措置なしにただ支払調書の送付を取りやめる支払者もいると思います。
そういう場合に備えて、個人事業者は日頃から自分の報酬がいくらで、そこからいくら源泉税が差し引かれているかを記録しておくべきです。
取引ごと、あるいは報酬が支払われるつど、きちんと帳簿に記録する習慣をつけておけば、ある日「支払調書やめます」といわれてもあわてなくて済むはずです。
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ちなみに、源泉徴収票の原票は所得税確定申告書への添付資料です(電子申告の場合は添付不要)。
あとで見る必要があるかもしれないのでコピーを手元に残しておいた方がいいですよ。
支払調書はそもそも添付不要です。