Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

e-Tax(イータックス)とeLTAX(エルタックス)

電子申告といっても国税と地方税でそれぞれ仕組みが違います。
最初から統一したシステムを作ってくれればよかったのに…という気もするのですが、いろいろ事情があってこうなっているのでしょう。
今回は2つの電子申告の仕組みをご紹介します。

そもそも「国税」と「地方税」とは?

気にしない方はまったく気にならないと思いますが、日本の税金は課税する行政機関によって「国税」と「地方税」に大別できます。

国税

国が課税する税金です。
国税に関する事務を取り扱うのは「財務省」→「国税庁」→「国税局」→「税務署」という国の役所です。
一般的な納税者にとっては「税務署」が窓口になります。

地方税

都道府県・市区町村が課税する税金です。
道府県税は「〇〇県税事務所」という役所、市町村税は市役所が窓口になっています。
東京都については特別ルールが適用されており、特別区(23区)については都税と区税をまとめて「○○都税事務所」という役所が管掌しています。同じ東京都内でも市町村については原則通り都税と市町村税は別個の役所が担当します。
たとえば、東京都多摩市の場合、都税は八王子都税事務所、市税は多摩市役所が窓口になります。

国税・地方税にどんな税目があるかは、こちらのページをご参照ください。

国税はe-Tax

e-Taxは国税に関する各種の手続について、インターネット等を利用して電子的に手続が行えるシステムです。
申告書等を電子データの形式でインターネットを通じて送信します。
現在のところ、e-Taxで以下の手続きが可能です。

  1. 所得税、贈与税、法人税、地方法人税、消費税(地方消費税を含みます。)、復興特別法人税、酒税及び印紙税に係る申告
  2. 全税目の納税(電子納税証明書の手数料納付を含みます。)
  3. 申請・届出等(電子納税証明書の請求及び発行を含みます。)

現時点では相続税の申告はe-Taxではできません。
【2019年12月16日加筆:2019年10月以降相続分からe-Taxでも申告できるようになりました。】
また、申告内容によっては、電子データ化できないものが出てきます。
その場合は、紙ベースで資料を税務署に別送(郵送)する必要があります。
完全にペーパーレスにならないこともあるということをお含みおきください。

参考:http://www.e-tax.nta.go.jp/#main

地方税はeLTAX

eLTAXもインターネット等を利用して電子的に手続が行えるシステムです。
国税のe-Taxに比べるとできる手続は限定的です。
たとえば、個人住民税の確定申告はできません。
参考:https://www.eltax.lta.go.jp/eltax/gaiyou/tetuduki/

また、eLTAXでの納税手続きに対応している自治体は以下の22団体のみです(2019年1月4日現在)。

都道府県税 岩手県、宮城県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、奈良県、島根県、岡山県
市町村税 仙台市、横浜市、川崎市、名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市、愛荘町、大阪市、福岡市

上記以外の自治体への納税は紙の納付書を使って金融機関、コンビニ(バーコード付き納付書の場合)で納付するしかありません。

【2020年1月7日加筆:2019年10月以降「地方税共通納税システム」を利用して全自治体に電子納税が可能になりました。ただし、納付できる税目は限定的です。参考: https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/gaiyou/

利用手続きも別個に必要

どちらも事前届出をしないと利用できませんが、別個のシステムなので、届出も別々にしなければなりません。
ユーザーIDくらい同一にしてくれてもいいのに…と思うのですが、これも別個です。
ちなみに、ユーザーIDの呼び名もe-Taxでは「利用者識別番号」、eLTAXでは「利用者ID」と別個になっています。
不幸中の幸いは、eLTAXの一個の「利用者ID」で複数の自治体での手続きが可能なことくらいです。

個人はe-Taxだけで済むことも

個人の確定申告の場合、所得税の確定申告書(第二表)の「住民税・事業税に関する事項」に該当事項を記入しておけば、住民税・事業税(地方税)の申告をしたことになるので、e-Taxだけで手続きを終えることができます(申告内容によっては資料の別送を要することがあります)。

所得税は申告不要だけれども住民税の申告が必要という方は、eLTAXでは住民税の申告はできないので、紙ベースで住民税の申告をしていただくことになります。

もっとも、個人の方でも人を雇って事業をしている場合には「法定調書」と「給与支払報告書」の作成・提出が必要になります。
「給与支払報告書」は従業員の方がお住まいの市区町村に提出する書類なので、これを電子申告するならeLTAXを使わざるを得ません。
また、事業規模が大きくて固定資産税(償却資産税)、事業所税の申告が必要な個人事業者の方も、これらを電子申告するにはeLTAXが必要になります。

法人は両方必要

法人の場合は、常に国税(法人税)と地方税(法人住民税・事業税)の両方を申告する必要がありますから、電子申告するなら、eTAXとeLTAXの両方を使用することになります。
もっとも、無理に併用する必要はありませんから、国税はe-Taxで、地方税は紙ベースで申告してもなんら差支えありません。
ただ、申告ソフトを利用して電子申告する場合は併用が前提になっていますので、流れに逆らわずe-TaxとeLTAXの両方の届け出をする方が無難です。

eLTAXからも提出できる「法定調書」

e-TaxとeLTAXが唯一連携しているのが「法定調書」の作成・提出です。
税務署に提出する法定調書の一つである「給与所得の源泉徴収票」は、市区町村に提出する「給与支払報告書」は内容が同一の双子です。
本来はそれぞれe-TaxとeLTAXで別個に手続きするものなのですが、さすがにそれでは納税者にとって負担になる(紙ベースの場合は両者が複写式になっているので記入は一度で済みます)ので、eLTAXから税務署に「給与所得の源泉徴収票」を送信できるようになっています。
ちなみに、e-Taxから
「給与支払報告書」を市区町村に送信することはできません。

また、eLTAXから税務署に送信できる「法定調書」は給与所得の源泉徴収票」だけです。
税理士報酬などの支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)等がある場合は、別途e-Taxから送信する必要があります。
どうせなら、すべての支払調書をeLTAXから税務署に送れるようにしてくれればよかったのに…と思うのですが、そこまでeLTAXも譲歩してくれなかったのでしょう。

***

入口から出口まで別個独立なe-TAXとeLTAXですが、申告ソフトを使えばまとめて同時に利用できます。
とりあえず入口(利用届出)さえ済ませておけば、それほど面倒はないと思います。
申告ソフトなしだと、ちょっと大変かもしれません。
法人と法定調書の電子申告はソフト利用を前提に考えたほうが良いでしょう。

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