Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

「フリーランス」だけど給与所得?

持続化給付金の申請に関連して所得税確定申告に関するお問い合わせ、特に「フリーランス」だけどその報酬を「給与」として受け取っている方からのご質問が増えています。
こういった報酬体系でお仕事をされている方も持続化給付金の対象になるのでしょうか?

「フリーランス」とは

そもそも「フリーランス」という働き方をどう定義すればよいのでしょうか。
一般的には、雇用関係によらず(会社等に雇われるのではなく)、独立した個人として仕事を請け負うことをフリーランスと呼んでいるように思います。
つまり、フリーランス=個人事業者というのが一般的定義になろうかと思います。

税法には「フリーランス」という定義はないものの、このフリーランス=個人事業者というとらえ方が自然に定着していると思います。
個人事業者の事業から得る所得は「事業所得」として所得税の確定申告の対象になります。
したがって、フリーランスとして得た所得は事業所得として申告するのが一般的と思われます。

持続化給付金の給付対象も当初は、「フリーランス」=「個人事業者」、「フリーランスの所得」=「事業所得」というこの一般論を前提に、所得税の確定申告で主たる収入を事業所得として申告した個人事業者のみを対象としていました。

拡充された持続化給付金の給付対象

ところが、フリーランスによる所得を「給与所得」や「雑所得」で申告している方が大勢いるということが判明し、こうした方々も持続化給付金の給付対象に加えることになりました。
制度的には、一般的な個人事業者を対象とする当初の給付金制度とは別に「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け」という制度が追加されています。
この追加された制度のもとでは、給付対象は以下のように定義されています。

フリーランスを含む個人事業者の方で、雇用契約によらない、業務委託契約等に基づく事業活動からの収入を、主たる収入として、税務上の雑所得又は給与所得で、確定申告をしている方等が対象となります。
持続化給付金申請要領 ー 主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け 2020年6月29日 持続化給付金事務局  P3)

つまり、基本的に「個人事業者」が給付対象であることに変わりはなく、雇用契約に基づく労働の対価までがフリーランス所得に含まれるわけではありません。
また、フリーランス収入が「主たる収入」であることも給付要件として変わりありませんので、会社勤めをしている方の「副業」としてのフリーランス収入が「本業」たる給与収入よりも少ない場合は、給付金を申請しても却下されると思います。

「給与所得」とは

所得税法上は「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得」と定義されています(所得税法28条1項)。
その内容は「勤労性所得(人的役務からの所得)のうち、雇用関係またはそれに類する関係において使用者の指揮・命令のもとに提供される労務の対価を広く含む観念であり、非独立的労働ないし従属的労働の対価と観念することもできる」(最判昭和56年4月24日)という判例に沿って解釈するのが一般的です。

冒頭でも触れたように、「フリーランス」といえば独立した個人として仕事を請け負うことが一般的なイメージなので、「非独立的労働ないし従属的労働の対価」である給与所得とは相いれない関係にあるように思えます。
しかしながら、最近話題の「ジョブ型雇用」にみられるように従前の雇用形態とは異なる「フリーランス」に近い雇用形態もありますので、この「非独立的労働ないし従属的労働」と「フリーランス」の線引きは容易ではありません。
今後働き方が多様化するにつれ、「独立的労働ないし非従属的労働の対価」、すなわち事業所得として取り扱うべき労働の対価というものが増えてくるのかもしれません。

持続化給付金の対象となる「給与所得」

このように「フリーランス」だけど給与所得?という税務上の疑問はあるにせよ、持続化給付金制度においては、税務上「給与所得」として申告した収入も対象に含めるという割り切りをしています。
ただし、「非独立的労働ないし従属的労働の対価」として支払われた給与所得は従前型の雇用契約に基づく対価なので給付対象にはならないはずです。
結局のところ、給与として支給を受けている対価がフリーランス所得に該当するかどうかは、実態に基づいて判断されることになろうかと思います。
そのため、今回追加された制度のもとでの給付申請の審査は、確定申告の内容だけでなく、フリーランス契約の実態を確認しながら進めることになるので、相当時間を要するものと思われます。
実際、日本でフリーランスとして働く外国人の方には在留資格(ビザ)を維持しやすくするために形式的にクライアントと雇用契約を結んでいる方が多いようです。
このような方は、給与所得の源泉徴収票に基づいて「給与所得」を確定申告をしていても、雇用契約の内容を審査してもらうことでフリーランスであることを認めてもらえる可能性があると思います。

「給与所得」を「事業所得」で申告できるか?

給付金申請にあたっては申請者本人名義の国民健康保険証の写しが必要とされています。これは、個人事業者は国民健康保険に加入することになっているため、その加入者証をもって実質的に雇用関係がないことを証明させようとしているのだと思います。
フリーランスの方の中には保険料の負担を嫌って国民健康保険に加入していない方もいるようですが、そのような場合は、保険証の写しがないという形式チェックで審査に落ちてしまいます。

そこで、「給与所得」を事業所得として所得税の確定申告を行い、一般的な個人事業者を対象とする給付金制度(国民健康保険証の写しは不要)に申請できないかというご相談もありました。
確かに、フリーランス契約の内容に遡ってその働き方の実態が個人事業者であることを証明できれば、給与所得の源泉徴収票がでている給与所得を事業所得として申告することも不可能ではないと思います。
しかし、給与の支払者が「給与所得」として考えているものを納税者が「事業所得」だと主張するには、それなりの理屈と証拠をそろえて臨む必要があります。
給与の支払者による所得税の源泉徴収が違っていたという別の問題を引き起こす可能性もあり、給与の支払者を巻き込む騒ぎになるかもしれません。
そのような事態になって雇用主との関係を悪くしては、たとえ給付金をもらえてもその後の事業継続が危ぶまれます。
このように「給与所得」を「事業所得」として申告するには相当の覚悟がいるので、個人的にはおすすめしておりません。

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これまで所得税の確定申告をしていなかったけれど、持続化給付金申請のためにこれから2019年分の確定申告をしようとお考えの方も多いようです。
確かに税金や社会保険の負担は軽くはありません。でもちゃんと義務を果たしておけば、今回のような緊急時に迅速な支援を受けられるというメリットもあります。
なお、フリーランス所得が「雑所得」にあたるかどうかについては、ブログ「『副業』だから雑所得?」をご覧になってみてください。

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