Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

確定申告電話相談センター

みなさま、所得税の確定申告は無事にお済でしょうか?
ヤマグチは1月に自分の申告(還付申告)を済ませて、1月末から3月にかけて「確定申告電話相談センター」に従事してまいりました。
投稿が久しぶりなのも、その影響です。
ということで、本日のテーマは「確定申告電話相談センター」の舞台裏です。

確定申告電話相談センターとは?

東京国税局が確定申告シーズンに設置するセンターで、東京税理士会所属の税理士が都内2か所(大手町、府中市)で管内の納税者からの電話相談に対応します。
私は自分の事務所に近いということで、大手町合同庁舎内のセンターで従事しました。
大手町センターでは、1月10日から3月15日の平日9時から17時までの間、毎日60~70人の税理士がシフト制で対応していました。

1人あたり70件?

私は、1月に1日、2月に4日、3月に7日従事しました。
どの日も電話がひっきりなしにかかってきて、予想以上に忙しかったです。
1人あたり1日70件の相談対応が目標になっていたので、相談1件あたりに使える時間は約6分です。
しかし、実際には6分で片付けられない質問も多く、私は一度もこの目標を達成できませんでした。
一方で、手際よく90件以上の相談をこなす税理士もおり、自分のトロさを痛感しました。

相談を受ける税理士の「慣れ」も必要でしょうが、処理時間の長短は相談内容によりけりです。
手書きで確定申告書を作成している方、特にお年寄りからの相談は、どうしても時間がかかります。
偶然なのか、総じてそうなのかわかりませんが、私が受ける電話は「手書き派」の方からの申告書の書き方についての相談が多く、どうしても10分くらいかかっていました。
また、相談者の方が口下手だったり、申告に必要な資料に関する知識が乏しいと、聞き手がフォローしなければ相談が成り立たないので、時間を要します。
「源泉徴収票」「年末調整」「保険料控除証明書」といった用語がわからない方を相手に30分近くお話しした日もありました。
私は、わからない方にはわかるようになってもらいたいので、従事初日から目標達成はあきらめて、じっくり対応していたのですが、途中国税局の職員の方からチェックが入りました。
各ブースの状態(通話中、離席中、後処理中など)をモニターしていて、私の通話時間が異常に長いので、様子を見に来たのだと思いますが、あまりいい気分ではなかったです。

税理士が電話にでても…

納税者の方からの電話相談は、まず所轄税務署の代表番号で受けることになっており、自動音声ガイダンスで「0」→「3」を選択するとオペレーターさんに電話がつながります。
申告書用紙等の送付など事務手続きの問い合わせについてはオペレーターさんが対応してくれるのですが、申告書の書き方や内容に関する相談はオペレーターさんから税理士に転送されてきます。
相談者の方は「0」を押してからオペレーターさんに電話がつながるまで相当長く待たされているようです。
さらに税理士に転送されると、また待たされるので、税理士が電話に出るころにはかなりフラストレーションをためている方もいらっしゃいました。
オペレーターさんからの転送を受けてみると、「相談会場での相談」に関する問い合わせや「税務署担当者への照会」だったりすることもありました。
こうした相談はセンターの税理士では対応できないので、結局所轄税務署に転送することになって、さらに相談者を待たせることになってしまい、本当に気の毒でした。

税理士が対応するべき相談か、所轄が対応すべき相談か、オペレーターさんの「目利き」次第で相談者の待ち時間は変わります。
オペレーターさん、税理士、税務署の三者間の分担・連携が大事です。

相談者への事情説明が必要では?

相談者の方と話しをしてみると、税理士ではなく、所轄税務署の職員に電話がつながったと思っている方が大半でした。
実際、国税庁ホームページなどをみても、確定申告電話相談センターのことや、そこで税理士が対応していることは説明されていません。
税理士会ではなく、各国税局が主導していることなので、内部事情を説明する必要はないのかもしれません。
しかし、内情を知らせたほうが、相談者、税理士双方のメリットになると思うのです。
たとえば、私自身、事情を知らない相談者からのクレーム(税務署での相談会場で間違った指導を受けた、違う相談会場を案内された…など)を受けたことがあります。
事情を説明して矛を収めてもらえたこともありましたが、「そんなの関係ない!」と激高するの方には本当に困りました。
さんざん待たされた挙句「税務署での個別対応についてはこちらではわかりかねます」といわれてカチンとくる相談者の気持ちもわからなくもないですが、とばっちりを受ける税理士もいやーな気分になります。
主催しているのは国税局でも、相談対応は外部委託しているということをちゃんと知らせた方が良いと思います。

もっと広報活動を!

今回延べ600人近い相談者とお話しすることができましたが、税理士が思っているほど、確定申告のことは知られていないということが良く分かりました。
例えば、医療費控除を申告したい方のうち、少なからぬ数の方が「医療費控除の明細書」だけを税務署に出そうとしていました。
確定申告書とセットで提出すべき明細書であることが周知されていないようです。

また、確定申告書の用紙だけを入手して、電話で申告書の書き方を相談してくる方も多かったです。
「確定申告書の手引き」なしで確定申告書を手書き作成することは不可能です。
相談された税理士も、「手引き」が手元にない相談者に申告書記載金額の計算を具体的に説明するのは大変です。
手書き作成には「手引き」が必要ということは、税務署、税理士にとっては常識ですが、納税者には周知されていないようです。

こうした情報は、国税庁・国税局が広報活動を通じて常日頃から発信しつづけるべきです。
電子申告への誘導に力を入れているのはわかりますが、まだまだ「手書き派」の方も多いです。
時代が変わっても、確定申告がどういうものかという基本的な情報提供は大事です。
もっとも、納税者の方々も、確定申告シーズンになるまでは、税に関して無関心であることが多いと思いますので、そういった方々に伝える方法を考える必要があるでしょう。

情報提供の不足分を確定申告電話相談センターで補完するという考え方もあるかもしれませんが、相談1件当たり6分の持ち時間では厳しいものがあります。

***

初めての確定申告相談センターは大変でしたが、実に有意義でした。
ただ、急ぎの仕事とセンター従事日が重なってしまい、3月は時間的・肉体的に厳しかったです。
ということで、約2週間ぶりのブログ投稿となった次第です。

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