Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

不動産投資と日本の税務

日本に住むようになり、日本を気に入り、日本の不動産に投資する外国人の方が増えているようです。
それはそれで、良いことなのですが、税金の面からはちょっと気になることがあります。
今日は、外国人の方が日本の不動産に投資した場合の日本の税務についてのお話しです。

投資のための資金調達にかかる税金

日本に居住する外国人の方の場合、まず、物件を購入する資金の出所から課税関係が生じることがあります。
外国人の方(正確には日本国籍を有していない方)は日本に住み始めて最初の5年間は「非永住者」として、国外で稼いだ所得(国外源泉所得)については、日本に送金されるまでは課税されないという恩典を受けていますが、不動産投資のために国外口座から資金を国内に持ち込んで思わぬタイミングで日本で課税を受けることになります。

よくあるパターンは、日本に住むようになった後、本国の留守宅を賃貸に出していたり、売却した場合です。
留守宅の賃料や売却代金を国外口座にプールしておいて、その資金を日本に送金すると、送金のあった年分の確定申告で送金額(またはその年の国外源泉所得のいずれか少ない金額)を所得に含める必要があります。

不動産の購入価格にあわせて送金したものの、日本での所得税負担を考慮していなかったために、追加送金が必要になったり、購入を断念せざるを得ないこともあります。

投資にかかる税金

不動産を取得する際に課される税金を考慮していなかったために資金繰りに窮する方もいるようです。

不動産取得税

原則4%で課税される不動産取得税の負担は大きいです。
住宅・宅地については軽減措置がありますが、自分で済むことを前提にしていない投資物件は対象外です。
ちなみに、課税標準額は売買価格ではなく市区町村が決める固定資産税評価額です。

消費税

購入代金のうち建物部分には8%(2019年10月1日以降は10%)の消費税が課税されます。
店舗・オフィスとして購入したものであれば、この消費税を税額控除の対象にすることも可能ですが、事前に課税事業者選択届出をしていないと還付申告書を提出でないという悲惨な結果になります。
外国人だけでなく、消費税申告と縁がない日本人サラリーマンの方も陥りがちな落とし穴です。

固定資産税・都市計画税

1月1日時点の不動産所有者が納税義務者になりますが、引渡し後の期間相当額を割りで売買代金に上乗するのが日本の不動産取引の慣行です。
基本税率は固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%です。
課税標準額は売買価格ではなく市区町村が決める固定資産税評価額です。

投資収益にかかる税金

所得税

貸せば「不動産所得」、売れば「譲渡所得」としてもうけに所得税が課税されます。

不動産所得

不動産所得は他の所得と合わせて15~55%の累進税率(含む地方税)で課税されます。

不動産所得の計算上、建物の減価償却費は必要経費になります。
もっとも、減価償却費は事業・賃貸に供している場合にしか認められませんから、売買目的で買ったものや、事業供用前の建築・改築中の期間については減価償却はできません。
税引後の投資リターンを計算する際に、購入した月から減価償却を見込んでいても、所得税の申告上必要経費に算入できるのは事業に供した月以後だということを説明していない販売業者さんもいるようです。
その年に償却メリットがとれると信じて年末間際に改築中の物件を購入した方からご相談を受けましたが、時すでに遅しです。

譲渡所得

譲渡所得は20.315%(不動産の所有期間が5年超の場合)または39.63%(5年以下の場合)の税率で課税されます。
譲渡所得は分離課税なので、他の所得区分で生じた損失との通算ができません。
長期投資のつもりで買ったものの、事情があって5年以内に不動産を処分することになると、譲渡所得に対する税負担が倍ほどになってしまいます。

消費税

住宅の賃貸収入は非課税ですが、店舗・オフィスの貸付は課税されます。
新たに不動産賃貸を始められる場合は、物件取得時の消費税も含めて消費税の課税関係をよく検討すべきです。
物件価格が高額であるほど、事前策の違いによって納税額に大きな差がでます。

また、物件の売却金額のうち建物部分はその用途(居住用か事業用か)にかかわらず消費税の課税対象になります。
このことは、売却した年に消費税の課税事業者に該当していた方の消費税申告だけでなく、その年の翌年・翌々年の納税義務(基準期間における課税売上高)にも影響しますので、不動産売却後もなんらかの事業を国内営んでいる方は注意が必要です。

日本を離れたあとの税金

不動産がらみの所得は日本を離れて「非居住者」になった後も日本で課税されますので、出国後の申告・納税のために「納税管理人」の選定が必要になります。

所得税

不動産所得

居住者と同様に日本で所得税の申告が必要です。
ただし、非居住者には地方税(10%)が課税されませんので、累進税率は5~45%になります。

譲渡所得

日本で所得税の申告が必要です。
非居住者の譲渡所得は15.315%(不動産の所有期間が5年超の場合)または30.63%(5年以下の場合)の税率で課税されます。

源泉所得税

賃貸料は20.42%の税率で、売却代金(譲渡所得ではなく売値)は10.21%の税率で、それぞれ支払い時に所得税の源泉徴収の対象となります。
源泉徴収された税額は確定申告することで所得税の年税額から控除されます。

消費税

所有者が非居住者となっても、消費税の課税関係は変わりません。
消費税の納税義務者である以上、出国後も消費税の申告が必要です。

固定資産税・都市計画税

所有者が非居住者でもしっかり課税されます。

 

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いかがですか?
こんなに税金かかるのか…って感じになりますよね。
でも、日本のこと嫌いにならないでほしいです。

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