Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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役員給与の損金不算入

会計上は費用なのに法人税法上損金にならないものがあることを以前ブログ「所得」と「利益」はどう違う?)で軽く紹介いたしました。
今回はその一つとして「役員給与の損金不算入」を取り上げます。
税法に「別段の定め」がないかぎり、会計上の費用はそのまま損金になるところですが、法人の役員に対する給与を原則損金不算入とする旨の定めが法人税法(以下「法」)に規定されています(法34条)。

建前と本音

法人税法が役員給与の損金算入に消極的なのは、役員が自分の報酬を自分で決めている「お手盛り」によって法人税の課税所得が圧縮されることを防ぐためです。
「お手盛り」は本来は企業統治上の問題ですから、会社法で規制すべきものです。
実際、会社法は取締役が会社から受ける報酬等については定款か株主総会の決議によって一定の事項を定めるなければならないと規定し、「お手盛り」を防止しようとしています(会社法361条)

しかし、株主やその親族が法人の役員になっている同族支配会社などでは、会社法が想定しているとおりに企業の「所有と経営の分離」が図られているとは限らず、「お手盛り」が横行する蓋然性があります。
適正な課税を実現するためには、株主支配という建前を尊重しつつ、その本音が「お手盛り」である場合には税法が独自の取り扱いを発動できるルールが必要です。
そこで、企業統治の観点からは「株主がいいと言っている以上は適法」ということになっていても、税法が「別段の定め」をもって損金算入を制限しているのです。

「役員」とは

法人税法上の役員とは、会社法上の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役)のほか実質的に法人の経営に従事している者も含む広い概念です(法2条15号)。
少数の株主によって支配されている「同族会社」の場合は、その使用人の中に大株主の関係者(特殊関係使用人)がいると、会社法上は使用人であっても税務上は「役員」扱いになることがあります(法人税法施行令(以下「令」)7条2号)。
大株主の縁故で関係者を使用人として雇用している場合は注意が必要です。
また、使用人でなくても、法人の経営に従事している者も税務上の「役員」に該当します。
いわゆる「顧問」「相談役」などがいる場合は注意が必要です。

「給与」とは

現金で支給される給与だけでなく、経済的利益(現物給与やフリンジベネフィット)も含まれます。
自社株や自社株の新株予約権を付与する報酬プランはもちろん、渡し切りの交際費、社有資産(自動車、不動産など)の無償または低廉による貸与、会社が保険料を負担する生命保険など、本人やその家族が便益を受けられる制度がある場合は注意が必要です。
また、会社の業務と関連性のない個人的支出を会社が肩代わりすることも「給与」の支給になります。
役員の独断専行やわがままに応じて経済的利益を与えることは税務上の問題以前に会社法上の問題になります。
お気を付けください。

損金算入できる場合

役員に対する給与は損金算入できないのが原則ですが、役員としての職務執行の対価として一定の作法に従って規則正しく支給される部分については例外的に損金算入が認められます。
法人税法は以下の3つの支給パターンを例外として認めています。

定期同額給与

1か月以下の一定期間ごとに支払われ、各事業年度で支払われる報酬金額が同額である給与です(法34条1項1号)。
月給(固定給)が典型です。
税務署への事前届出は不要ですが、事業年度の途中での金額変更には一定の制約があります。
変更後の期間内に支払われる給与はそれぞれ同額でなければなりません。

変更の種類 理由 具体例
定期改訂 期首から3か月以内の変更 定時株主総会の決議に基づく改訂
臨時改訂 役員の職務の内容に重大な変更 役員が事故や病気で長期入院して仕事ができないため減額せざるをえない
役員が不祥事等をおこしたために減額せざるをえない
役職の変更 取締役から代表取締役になり、仕事量・責任が重くなったため増額
業績悪化改訂 法人の経営状態が著しく悪化 株主との関係上、業績や財務状況が悪化したことへの役員としての経営上の責任から、減額せざるをえない
借入金の返済が遅れているなどが原因で、取引銀行との間で行われる借入金返済のスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるをえない
業績や財務状況又は資金繰りが悪化したので、取引先等の利害関係者との信用を維持・確保する必要があり、経営状況の改善を図るため役員給与の額の減額せざるをえない

上記以外の理由で変更すると、差額が損金不算入になります。
業績不振・資金繰りの悪化による場合でも、会社以外の第3者との関係で減額せざるをえない理由がなければ、減額前に支給した給与の一部が損金不算入になってしまいますので、注意が必要です。
定期同額給与は余裕をもって控えめな金額にしておいて、毎年株主総会の決議で定期的に見直していくのがベストでしょう。

事前確定届出給与

定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しない役員給与については、あらかじめ所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、 届出書とおりの支給日に記載金額を支払う場合に限り損金算入が認められます(法34条1項2号)。
税務署への事前届出の期限は次のとおりです。

原則 株主総会などの決議をした日から1か月以内 いずれか早い日
会計期間開始の日(事業年度開始の日)から4か月以内
新設法人 設立日以降2か月以内


業績連動給与

利益に関する指標を基準にして業務執行役員に支払う給与です。
非同族会社または同族会社(非同族会社との間にその法人による完全支配関係があるもの)が業務執行役員に支給する業績連動給与で、その算定方法、支給時期などについて一定の要件を満たすものについては、損金に算入できます(法34条1項3号)

「利益に関する指標」は有価証券報告書に記載されているものに限られていますので、このパターンで損金算入できるのは上場企業などの大企業に限られるのが実情です。

不相当に高額な場合等の損金不算入

上記の3パターンのいずれかに該当する給与であっても、その額のうち不相当に高額な部分とされる金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できません(法34条2項)。
「不相当に高額」かどうかは、その役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、同種・類似規模の法人の役人に対する給与の支給状況を勘案し、定款の規定又は株主総会で決議された支給限度に基づいて判定します(令70条1号)。

また、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、損金の額に算入できません(法34条3項)。

使用人兼務役員の場合

使用人兼務役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます(法34条6項)。
「取締役営業部長」「取締役総務部長」などが典型例です。
同族会社の役員のうち、その会社の大株主でもある者(特定役員)については、実際に使用人として職務に従事していたとしても使用人兼務役員として取り扱ってもらえません(令71条)。

使用人兼務役員には、役員としての職務に対する給与(役員給与)と使用人としての職務に対する給与(使用人給与)を支払うことができます。
使用人兼務役員に対する給与については、その金額を役員給与と従業員給与に分けて以下のように判定することになります。

  給与 賞与
役員給与 定期同額給与のみ損金算入 事前確定届出給与・業績連動給与を損金算入
使用人給与 不相当に高額な部分を除き損金算入 不相当に高額な部分を除き損金算入
ただし、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは損金不算入

したがって、役員給与と使用人給与を明確に区別できるよう、一般の給与規定の他に役員給与規定も制定しておくことが望まれます。
また、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは損金に算入できません(令70条3号)ので、支給時期についても注意が必要です。

役員退職給与

役員に対する「退職金」「慰労金」などの退職給与の支給額のうち、不相当に高額な部分は損金に算入されません(法34条1項本文括弧書、同条2項)。
「不相当に高額」かどうかは、その役員が法人の業務に従事した期間、その退職の事情、同種・類似規模の法人の役員退職給与の支給状況等を勘案して総合的に判断することになっています(令70条2号)。
しかし、実務上は納税者が「不相当に高額」ラインを予想することは困難であり、税務調査で調査官と意見が対立することも少なくありません。
まずは、役員退職規定などで役員退職金の算定根拠を明確にしておき、可能な限り同種・類似規模法人における支給状況を入手して比較検討を重ねていくことが望まれます。

***

役員給与は、支給を受けた役員側で所得税の課税を受けます。
オーナー社長の場合、法人税と所得税の両方に配慮して全体の税負担が適正になるよう給与額を決めるべきです。
また、給与が増えればそれだけ社会保険料の負担も増します。
法人税法上、経済的利益が給与と認定されれば、所得税法上も給与として取り扱われますから、所得税の源泉徴収も必要になります。
役員給与の取り扱いは、いろんなところに波及します。

 

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