Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

法人税確定申告書の添付書類

申告書が「メイン」で、添付書類なんて「付け合わせ」程度に考えていませんか?
侮ってはいけません。
添付資料を作っている過程で決算書・申告書のミスに気が付くこともあります。
こころを込めて作りましょう。

決算書・科目内訳

法人税申告書に添付が必要な書類は以下のように法律で定められています。

法人税法74条3項
第1項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない。

 

法人税法施行規則35条
法第74条第3項(確定申告)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの(当該各号に掲げるものが電磁的記録で作成され、又は当該各号に掲げるものの作成に代えて当該各号に掲げるものに記載すべき情報を記録した電磁的記録の作成がされている場合には、これらの電磁的記録に記録された情報の内容を記載した書類)とする。

  1. 当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書
  2. 当該事業年度の株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書又は損益金の処分表(これらの書類又は前号に掲げる書類に次に掲げる事項の記載がない場合には、その記載をした書類を含む。)
    イ 当該事業年度終了の日の翌日から当該事業年度に係る決算の確定の日までの間に行われた剰余金の処分の内容
    ロ 過年度事項(当該事業年度前の事業年度又は連結事業年度の貸借対照表、損益計算書又は株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書若しくは損益金の処分表に表示すべき事項をいう。)の修正の内容
  3. 第1号に掲げるものに係る勘定科目内訳明細書
  4. 当該内国法人の事業等の概況に関する書類(当該内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む。)
  5. 組織再編成(合併、分割、現物出資又は法第2条第12号の5の2(定義)に規定する現物分配(次号において「現物分配」という。)をいう。次号において同じ。)に係る合併契約書、分割契約書、分割計画書その他これらに類するものの写し
  6. 組織再編成により当該組織再編成に係る合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人その他の株主等に移転した資産若しくは負債その他主要な事項又は当該組織再編成(現物分配にあつては、適格現物分配に限る。)に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人若しくは現物分配法人から移転を受けた資産若しくは負債その他主要な事項に関する明細書

決算書

添付する決算書(貸借対照表及び損益計算書)は「確定」したものに限ります。
すなわち、会社法の規定に則って会社内部の手続きを踏んだものであることが必要です。
株式会社の決算書は、取締役が定時株主総会に提出し、株主の承認を受けることで最終的に確定します(会社法438条2項)。
会計監査人(公認会計士)の監査を受ける会社(会計監査人設置会社)の場合は、株主総会の承認は不要(総会で報告すればOK)ですが、何らかの事情で監査が遅れると、監査報告書が遅れる→株主総会での報告が遅れる→決算が確定しない→申告書も出せない→期限後申告→青色申告の取消理由に該当というパターンに陥りますので、監査対応・スケジューリングには注意が必要です。

株式会社に比べると持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の決算書確定手続きは簡便なもので済みます。

科目内訳

いざ作ろうとすると結構な労力を要します。
2019年4月以降終了事業年度から法人税確定申告書に添付する「勘定科目内訳明細書」の記載が「簡素化」されるのは朗報です。
これまで一定金額以上の残高を全件記載しなければなりませんでしたが、改正後は上位100件まででよくなります。
取引先が何千、何万とある大法人にとっては間違いなく「簡素化」になります。
ただし、これまで実務慣行として上位10社とか50社とか適当にラインを引いて残りを「その他」としてまとめて記載していた中小法人にとってはかえって迷惑な改正かもしれません。
これまでどおりの取り扱いを運用上認めてくれるか気になるところです。

参考資料
http://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/22.htm
http://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/kansokajiko_ichiran.pdf

電子申告の場合

大抵の会計ソフトはXBRL/XMLへのファイル変換を前提に作られているので、問題ありません。
エクセル等で自作した決算書・科目内訳をそのままe-Taxで送信することはできません。
CSVファイルとして保存した後、e-Taxソフト(PC版)でファイル形式を変更(CSV→XBRL/XML)してから申告書データに添付する必要があります。
このCSVファイルにする段階で国税庁が定めた形式に適合していなければ、XBRL/XMLへの変換がうまくいかないので注意が必要です。

参考資料
http://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_ribenseikojo.htm

事業概況書

売上・仕入・外注費・人件費・源泉徴収税額・従業員数を月ごとに記載する欄(月別の売上高等の状況)があります。
これも期中にタイムリーに記帳していれば集計・転記するだけのことですが、数か月分をまとめて期末に一括計上したりしていると、どこまでマジメに記載するか困ります。

適用額明細書

これも添付が必要です。
申告書本体とは別になっている書類なので、うっかり出し忘れということがありえます。

税務代理権限証書

税理士に申告書の作成を依頼したときに添付が必要です。
これを出しておくと、税務調査の際に直接税理士に連絡がきます。

申告書別表の付表

申告書別表に一件ずつ記入するのが手間なデータは、エクセルなどのアウトプットを「別紙明細」などとして添付することが実務上の慣行になっています。
紙で申告する場合は特に問題はありませんが、電子申告の場合は添付できる書類ごとにデータのフォーマットが決まっているので注意が必要です。
原則的に数字に関するものを「別紙明細」として電子送信することはできません。
XBRL/XML形式になじまない文書に限ってPDF形式による添付送信が認められています。

参考資料
http://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/imagedata/shinkoku02.pdf

どうしてもエクセルなどのアウトプットを「別紙明細」にしたいなら、「電子申告及び申請・届出による添付書類送付書」を添えて郵送することになります。

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以前ブログ「大法人の電子申告義務化」でもご紹介したのですが、添付資料が多い会社にとって電子申告の使い勝手は悪そうです。
これから段階的に改善されていると期待していますが、しばらくは忍耐が必要です。

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