Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

変る所得控除

税務署で配布されている所得税確定申告書の用紙。
毎年どこかしらマイナーチェンジがあるのですが、令和元年分申告用にある重大な変更があったのにお気づきでしょうか?

所得控除とは

所得税の確定申告書は「第一表」と「第二表」から構成されています。
最低でもこの二つの表は作成が必要で、必要に応じて明細書や別紙を追加していきます。
不動産や上場株式の譲渡など「申告分離課税」の対象となる所得がある場合は「第三表」という用紙も作成します。
「第二表」「第三表」その他の明細書等で計算したから金額が「第一表」に転記されていく仕組みになっています。

「第一表」には「所得から差し引かれる金額」いわゆる「所得控除」の金額の記入欄があります。
現在のところ以下の13種類の所得控除が認められています。

  1. 社会保険料控除
  2. 小規模企業共済等掛金控除
  3. 生命保険料控除
  4. 地震保険料控除
  5. 寡婦(寡夫)控除
  6. 勤労学生控除
  7. 障がい者控除
  8. 配偶者控除(配偶者特別控除)
  9. 扶養控除
  10. 基礎控除
  11. 雑損控除
  12. 医療費控除
  13. 寄付金控除

変る「基礎控除」

上記13種類のうち、2019年(令和1年)までだれでも無条件に控除がとれていたのが「基礎控除」です。
控除額は一律38万円でしたが、2020年(令和2年)からは所得金額に応じて控除額が以下のように変わります。

合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

かつては所得金額とは無関係にだれでも38万円控除できていたので、2018年(平成30年)分までの確定申告書の第一表の基礎控除の欄には最初から「380000」と金額が印字されていました。
一律38万円の基礎控除は2019年(令和1年)まで認められているのですが、現在税務署で配布されている申告書第一表の基礎控除欄には「380000」の印字がありません。
おそらく2020年以降も使えるように基礎控除の金額なしで印刷を発注したのだと思いますが、このために基礎控除の改正が2019から適用になっていると勘違いしたり、単純に38万円控除し忘れる方がけっこういるようです。

「青色申告特別控除」も変わります

個人事業者の「青色申告特別控除」も2020年(令和2年)から変わります。
「青色申告特別控除」は先述の13種類の「所得控除」とは別枠で「事業所得」から控除できる金額です。
これまでは65万円の控除が認められていましたが、2020年以降の控除額は原則55万円に下がります。
e-Tax(電子申告)で青色申告決算書等のデータを送信する(または電子帳簿保存を行う)と、控除額はこれまでどおり65万円になります。
合計所得金額が2,400万円以下の個人事業者の場合、基礎控除で10万円引上げの恩恵を受けられますが、電子申告しないと特別控除が10万円減額されてしまい、結局変わらずということになります。

青色申告している個人事業者を電子申告に誘導しようという意図が見え見えですが、65万円の特別控除を維持したいならこれには乗るしかありません。
電子申告の手間が10万円の所得控除に値するかは人それぞれでしょうが、一度慣れてしまえばそれほど手間はかかりません。
こえを契機にトライしてみてはいかがでしょうか?

***

大法人の法人税・消費税の申告については2020年4月1日以降開始事業年度から電子申告が強制されます。(参考:「大法人の電子申告義務化」)
紙ベースの申告をしても無申告扱いにするという強権発動的強引さはちょっとどうかと思いますが、それだけ政府も本気ということでしょう。
それに比べて個人事業者の電子申告への誘導策は穏便に見えます。
基礎控除10万円引上げとトレードオフだからデジタル難民にとっても負担なしという仕組みはうまく考えたと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください