Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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どこで働き、どこで納税するか?

コロナ禍という思わぬ事態をきっかけにリモートワークを始められた方も多いと思います。
実際にやってみて、意外にも快適に仕事ができる人、家族に気を使うので仕事がはかどらないという人、それぞれだと思いますが、この流れで「働き方改革」が加速するのではないかといわれています。
今後はフリーランスの方だけでなく会社勤めの方にとっても、どこで働くか選択肢が増えていくことでしょう。
この「どこで働く」という選択は、場合によっては「どこで税金を払うか」という課税関係にも影響してきます。

国税の「納税地」

国税には「納税地」という概念があります。
納税地とは、どこの税務署に対して申告・納税等の手続きをすべきか(管轄の税務署)を決める基準となる場所のことです。
所得税法(15条~20条)、法人税法(16条~20条)、消費税法(20条~27条)、相続税法(62条)、印紙税法(6条)などの法律にどのような場所を納税地にするか定めがあります。

個人事業者の場合

個人は住所地が納税地になるのが原則です(所得税法15条1項1号)が、これに代えて事業を営む場所(事業場等)を納税地として届け出ることもできます(所得税法16条2項・4項)。
個人事業者で事業場等を納税地にしている方は、自宅がそのままでも、税務署に届け出た仕事場が変われば、納税地も変わります。

法人の場合

法人は本店所在地が納税地になりますが、本店が外国にある法人(外国法人)については別に定めがあり、国内にある事業場等一定の場所が納税地になります(法人税法17条)。

会社の場合は登記した本店所在地等が納税地になりますので、そこで働く個人の働き方に影響されにくいといえますが、代表者個人のライフスタイルや働き方が会社の存在に直結する「ひとり会社」については注意が必要です。
たとえば、オフィスを借りるのをやめて代表者の自宅を本店として登記しなおしたときは、納税地が変わります。

事業税の「事務所又は事業所」

個人事業者・法人に課税される事業税は地方税(都道府県税)のひとつです(地方税法72条~72条の76)。
「事務所又は事業所」が所在する都道府県が課税します(地方税法72条の2)。
そして「事務所又は事業所」とは、「事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所」のことです。
一般的には「事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所」と解されています(地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第6)。
国税の納税地は税目ごとに一か所ですみますが、事業税は「事務所又は事業所」がある都道府県すべてに対して申告が必要になります。
したがって複数の都道府県に「事務所又は事業所」を持つことになるとその分申告・納付の手間が増えます。

働き方改革によって、本来のオフィス以外の仕事場が増えるときは注意が必要です。
例えば、サテライトオフィスのような場所は「事業の必要から設けられた」「物的設備」に該当します。
そこでそれなりの時間、自己の事業に従事する人がいれば、「人的設備」も備えた「継続して事業が行われる場所」として新たな「事務所又は事業所」ができたとみられる可能性があります。
自宅勤務が常態化すれば、自宅が「事務所又は事業所」を兼ねているという見方もできます。

新たに「事務所又は事業所」を開設した都道府県には、事業開始等申告書(個人所業者の場合)・法人設置届出書(法人の場合)を提出しなければなりません。
すでに
「事務所又は事業所」がある都道府県に追加で「事務所又は事業所」を開設するときも届出が必要です。

個人事業者の場合

個人事業者は、所得税の確定申告書・第二表の「住民税・事業税に関する事項」に必要事項(他都道府県の事務所等など)を記入して税務署に提出すれば、各都道府県に事業税の申告は不要です。
各都道府県が
納付すべき事業税を計算し、後日納付書を送ってくれます。
したがって、各都道府県に対して「事務所又は事業所」の開設・廃止の届出さえしておけば、申告の手間は増えません。

法人の場合

一方、法人は「事務所又は事業所」がある都道府県ごとに事業税の申告が必要です。
各都道府県への納税額も自分で計算しなければなりません。
複数の都道府県に「事務所又は事業所」がもつ法人は「分割法人」とよばれ、まず、課税標準額の総額を計算してから、それを各都道府県に分割するための計算もしなければなりません。
課税標準の分割基準は事業内容によって違いますが、一般的な事業の場合は各都道府県に有していた事業所の数とそこで働いている人員数を基準にします。
また、事業税の税率は都道府県ごとに異なることがありますので、申告にあたって適用税率の確認は必須です。
働き方改革によって、会社の事業税申告の手間が増えるということもありえます。

恒久的施設

働く場所が国を超えて変わるときは、国際税務の観点からどの国に「恒久的施設」をもつことになるかという点にも注意が必要です。
「恒久的施設」とは、簡単にいえば継続して事業を行うための施設です(所得税法2条8号の4、法人税法2条12号の19)。
本店・支店、事務所、⼯場などが典型ですが、個人事業者や会社の事業のために代理行為(民法99条~118条)をする者(代理人)も「恒久的施設」に含まれます。
例えば、非居住者・外国法人から代理権を与えられて日本国内で非居住者・外国法人の事業のために何らかの法律行為(契約締結など)をする者(個人・法人を問いません)がある場合は、その非居住者・外国法人は日本国内に「恒久的施設」を有していることになります。
この「恒久的施設」の範囲は、日本が外国との間に締結した「租税条約」の規定によって変わることがあります。
関係する相手国との間に租税条約がある場合は、条約の規定ぶりによっては不利にも有利にもなり得ますので要確認です。

参考ブログ:EC(電子商取引)とPE(恒久的施設)

契約関係に注意

一般的に、「恒久的施設」が存在する国は、自国内の「恒久的施設」を通じて行われた事業所得に対して所得税・法人税を課税できるよう税法に定めを置いています。
したがって、何が「恒久的施設」に該当するかは、どの国で課税を受けるかに関係してくる重要事項です。
リモートワーク等で非居住者・外国法人からの仕事を請け負っている場合、あるいは非居住者・外国法人に仕事を委任している場合は、それらが代理行為、ひいては「恒久的施設」の存在につながるのではないかという観点で確認することをおすすめします。

法人の代表者も注意

また、自覚のないままに代理人になっていることもありますので注意が必要です。
例えば、会社の代表者は、会社との間で代理契約がなくても、会社名義で会社のために法律行為をなしうる包括的な権限を与えられていますので、日本の居住者(日本人・外国人にかかわらず)が外国で設立された会社の代表者に就任すると、支店等の物的施設が日本になくても、国内に代理人としての「恒久的施設」があるという理由で日本の法人税課税を受ける可能性があります。
とくに株主兼代表者が一人しかいない「ひとり会社」の場合は、そのリスクは一層高くなります。
気をつけましょう。

***

ヤマグチの納税地(自宅住所)は千葉県にありますが、税理士として登録した事務所(事務所又は事業所)は東京にあります。
したがって、所得税は千葉の税務署に申告・納税していますが、事業税は東京都に払います。
いまのところ国外に恒久的施設はありませんので、外国で課税される心配はありません。

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