Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant
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「副業」だから雑所得?

これまで年末調整だけで済んでいた給与所得者の方も、副業で所得を得るようになると所得税の確定申告が必要です。
業OKの会社が増えてきたり、自宅でフリーランスとして働く主婦・主夫の方が増えるにつれ、所得税の確定申告に向き合わなければならない方が増えていますが、そんな方々からよくある質問が「副業は雑所得で申告すればいいんですか?」です。
シンプルな質問ですが、場合によっては結構難問だったりします。

副業の内容で決まる所得区分

最初に結論をいってしまうと、雑所得になるとは限りません。
所得区分は副業の内容によります。
所得税法は、所得をその源泉ないし性質に応じて10種類に分類しています(所得税法21条1号、23~35条)。
反復・継続的利得として「利子所得」、「配当所得」、「不動産所得」、「事業所得」、「給与所得」、「退職所得」の6種類、一時的・偶発的利得として「山林所得」、「譲渡所得」、「一時所得」の3種類が個別に規定されています。
そして、これら9種類のいずれにも該当しない所得が「雑所得」ということになります。

このように「雑所得」は消極的に(仕方なしに)選択される最後の所得区分なので、最初から雑所得にあたると決めつけてしまうのはちょっと危険です。
週に1日のアルバイトであっても、どこかに雇われて得た日給は「給与所得」です。
雇用関係ではなく業務委託という形態でアルバイトをすれば「事業所得」にあたる可能性大です。
フリーランスとして仕事を請け負って得る所得も「事業所得」にあたるのが普通です。

金額・回数の多寡では決まらない

よく聞かれるのは「収入が少ないので雑所得でいいですよね?」という質問です。
たとえ一回だけのアルバイトでも雇用関係に基づいて支給された給与は「給与所得」です。
収入が少なくても反復・継続するつもりで(雇用関係なしに)仕事をしていれば、それは「事業所得」です。
ポイントは金額・回数の多寡ではなく、雇用関係の有無と反復・継続性です。

ちなみに、不動産の家賃収入は「不動産所得」として申告します。
一般的に戸建て5棟、貸室10室以上を貸していると「事業的規模」にあたるとされていますが、その場合でも家賃収入の所得区分が「事業所得」に代わるわけではなく「不動産所得」のままです。

任意選択できるものではない

「とりあえずお試しで始めた仕事でまだ事業と呼べるほどのものではないから」という理由で初年度に雑所得で申告している方を見かけます。
これが妥当かどうかも場合によります。
例えば、たまたま知り合いから頼まれて雑誌に掲載する記事を数回書いてあげたとか、正式な雇用関係なしに友人のお店を数日手伝ったとか、「たまたまで今後続ける予定はない」=反復・継続性なしという場合であれば、もらった謝礼の所得区分は雑所得が妥当と思います。
一方、フリーランスのライターとして仕事をしているのであれば、他に本業があっても、数回しか依頼がなかったとしても、そして金額がわずかでも、受け取った原稿料は「事業所得」で申告すべきです。

かくいう私もサラリーマン時代に(すでに税理士として登録済みでしたので)税理士会の依頼で年に2~3日だけ確定申告相談会に従事して謝礼をいただいたことがあります。その時は「登録税理士の義務として仕方なしに引き受けたが、強制されない限り今後は引き受けない」ので雑所得で申告しました。
今でも同様の謝礼をもらうことがありますが、独立開業後は反復・継続的な本業(税理士業)の一部として受けた依頼の報酬ということで事業所得に含めて申告しています。

このように同じ性質の収入であっても「たまたま」か「今後も予定している」という反復・継続性の有無によって、申告する所得区分が違ってきます。
この違いは働き方という客観的事実で決まるものであって、
自分で任意に選べるものではありません。

税務メリット少ない「雑所得」

副業を雑所得で申告したがる方に共通するのは、そのほうが申告が簡単だと考えていることです。
たしかに、事業所得として申告する場合は、収支内訳書(青白申告の場合は青色申告決算書)を作成する必要がありますので、その分手間はかかります。
気持ちは分かりますが、反復・継続して副業をしているのであれば、ちゃんと事業開始届出を税務署に提出して事業所得として申告すべきです。

「雑所得でも必要経費は収入から控除できるので事業所得で申告する場合と結果は変わらない」という理由で雑所得で申告したがる方もいます。
副業が順調で黒字続きであれば結果的に問題ないかもしれませんが、必要経費がかかりすぎて赤字になる年は雑所得での申告は不利になるかもしれません。
というのは、雑所得で生じた赤字は同じ雑所得の区分内で生じた他の黒字と通算できますが、所得区分を超えて他の所得の黒字との通算はできないためです。
一方、事業所得で生じた赤字は他の所得区分で生じた黒字と通算できます。
例えば、事業所得の赤字は給与所得と通算できますから、サラリーマンが副業で赤字を出すと、赤字分だけその年の総所得金額が減り、結果的に所得税も減ります。
これに対して雑所得の赤字は給与所得と通算はできませんので、副業が雑所得に該当する場合は、いくら副業で赤字を出しても給与所得に対する所得税の負担は変わりません。

また、青色申告の承認を受けておけば、事業所得の赤字を3年間繰り越して将来の事業所得の黒字と通算することもできますし、いろいろ税務上の優遇措置を受けることも可可能になります。
雑所得の赤字はその年限り、しかも同じ雑所得の区分内での通算しかできません。
雑所得での申告は手間がかからないかもしれませんが、税務上の恩典を利用できる機会はほぼ皆無です。

事業税との関係

「事業所得で申告すると事業税がかかるから雑所得で申告したい」という方もいますが、それはいけません。
そもそも、事業所得として所得税(国税)の申告をしたから事業税(道府県税)がかかるとは限りません。
事業税の課税対象は地方税法で定められた70業種(法定業種)から生じた所得です。
残念ながら大抵の事業はこの法定業種に該当しますが、仕事の仕方によっては法定業種から外れることもあります。
例えば、システムエンジニア、アニメーターなどのお仕事は、個人事業者として仕事を請け負っていても、仕事の依頼主との契約関係によっては独立した事業者とはみなされず、事業税が課されないことがあります。
その判断は都道府県により異なりますが、一般的には、一社専属で仕事を請け負っており、特定の成果物の引渡し義務を負っていない契約内容であれば法定業種から外れる傾向が高いようです。

「持続化給付金」の支給要件との関係

今年(2020年)のコロナウイルス感染症拡大により、営業自粛等を強いられて大幅に収入が減った個人事業者は最大100万円の「持続化給付金」を申請できます。

この持続化給付金は、今年ある月の事業収入が前年同月に比べて50%以下に減少していること等を要件に支給されますが、ここにいう「事業収入」とは事業所得の収入金額のことです。
申請にあたっては、前年(2019年)の所得税確定申告書を証拠書類として提出することになっていますので、副業を雑所得で申告している方が申請しても、前年の事業収入がないということで形式チェックで却下されてしまいます。
実質的に事業所得だったものを雑所得で申告した個人事業者を形式論で見捨ててよいのかという問題はありますが、給付金の所管官庁である経済産業省は現時点では「持続化給付金」の適用要件を緩和して対処するつもりはなく、別の追加支援策を検討中とのことです
(出典:2020年5月12日の梶山経産大臣の記者会見要旨

また、「今後も事業継続意思があること」も支給要件の一つになっていますので、持続化給付金を申請した人が2020年以降の所得税の確定申告で副業を「反復・継続性なし」という理由で雑所得として申告することは信義に反し、許されないと思います。

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雑所得は事業所得との区別だけでなく一時所得の区別についても議論があります。
ご興味がある方はこちらのブログ「事業? 一時? それとも『雑』?」もどうぞ。

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