Takashi Yamaguchi, English Speaking Japanese Tax Accountant

内国法人と外国法人

所得税法と同様に法人税法でも法人を「内国法人」と「外国法人」に区別しています。
ちなみに、個人に対する法人税の課税はありませんから、法人税法に「居住者」「非居住者」に関する規定はありません。
今回は法人税の観点から「内国法人」と「外国法人」がどう違うのかお話しします。

内国法人とは

国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいいます(法人税法(以下法法)2条3号)。
所得税法上の定義と全く同じです。
会社法、一般社団・財団法人法などの日本法に準拠して設立された法人は内国法人にあたります。

内国法人の課税範囲

「内国法人に対しては、各事業年度(連結事業年度に該当する期間を除く。)の所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課する」(法法5条)とされています。
このように単に「所得」に課税するといっているときは、どこで所得を得ようと、そのすべてが日本で課税されるという意味になります。したがって、内国法人が海外支店を通じて外国で稼いだ所得も日本で課税されるということです。このように、世界のどこで稼いでも全ての所得を課税する方法を「全世界所得課税」と呼んだりします。
海外支店の所在国でも所得税や法人税があると、その支店の所得に対しては現地の所得税・法人税が課税されます。
その上、日本でも法人税が課税されるのですから、同一の所得に対して二重に課税されることになります。
このように、全世界所得課税を採る国では国際的二重課税の問題が生じます。

国際的二重課税を回避するには、どちらかの国が課税権を放棄するなど譲り合いが必要になります。
最初から自国内で発生した国内源泉所得にしか課税しない方法(属地主義)を採ることでこの問題を避けている国(フランス、シンガポールなど)もありますが、先進7か国(英、米、仏、独、伊、加、日)に関してはフランス以外のすべてが全世界所得課税を採っているのが現状です。
全世界所得課税をする国は自国の課税権を留保しつつも、「外国税額控除」という制度を設けて国際的二重課税を軽減しようとしています。
今回はあまり深くは立ち入りませんが、日本の法人税法でも外国税額控除の規定があります(法法69条)。
また、一定の要件のもとに特定の国外源泉所得を非課税にする制度を設けて部分的に属地主義的な課税を取り入れている国もあります(イギリス、イタリアの海外支店免税制度など)。
日本も外国子会社からの配当のほとんど(95%)を非課税にしています(法法23条の2)ので、部分的に属地主義を取り入れている国といえるかもしれません。
国内法にこのような措置がなくても、租税条約の規定によって国際的二重課税の回避・軽減が図られることもあります。

外国法人とは

内国法人以外の法人をいいます(法法2条4号)。
これも所得税法上の定義と全く同じです。

外国法人の課税範囲

外国法人に対する法人税の課税範囲は日本国内で稼いだ「国内源泉所得」に限定されます。
内国法人の場合と違い、属地主義による課税です。
課税される国内源泉所得の範囲は、外国法人が日本国内に「恒久的施設」を持つかどうかで異なってきます(法法141条)。
「恒久的施設」とは、支店、工場、建設作業場等、一定の「代理人」のことで、前回のブログでご紹介した所得税法における恒久的施設(PE)と同じです。

国内PEを有する外国法人の場合

以下の2種類の所得が課税されます(法法141条1号)。
① 国内PEを通じて行う事業の所得(法法138条1項1号)
② 国内にPEがなくても比較的手軽に得られる所得(国内資産の運用・保有、国内資産の譲渡、国内不動産等の貸付など。法法138条1項2号から6号)

かつては①には「国内PEを通じて」という絞りがかかっていませんでしたので、国内にPEがあれば、本店や海外支店の事業に帰属する国内源泉所得まで日本の法人税が課税されていました。
例えば、本店が日本支店を介さないで直接国内にストックしていた商品を国内で販売した場合、本店に計上された国内売上も法人税の申告対象に含める必要がありました。
このような課税方法は「総合主義」と呼ばれます。
法人税法は長らくこの方法を採っていましたが、2016年4月1日以降開始事業年度から、事業所得については国内PEの事業に帰属する所得だけを課税対象にする方法(帰属主義)に改めました。
ちなみに、日本が締結している租税条約では帰属主義が取られています。
租税条約は国内法(法人税法)より優先適用されるので、法人税法が総合主義を採っていた時代から、租税条約締約国の法人については帰属主義による課税が行われていました。

2016年の法人税法改正は租税条約締約国以外の法人にも帰属主義が適用されるという点で大改正ですが、PEに帰属する事業所得の計算の細目を定めたという点ではすべての外国法人に影響を及ぼしています。
租税条約に定めがない事項は法人税法の規定に従うことになりますから、租税条約締約国の法人も注意が必要です。

国内PEがない外国法人の場合

上記のうち②だけが課税されます。
所得税と違って法人税には「源泉徴収」で納税を完結させる制度はありませんから、上記②の所得がある外国法人はPEがなくても法人税の確定申告書を税務署に提出しなければなりません。
納税地の指定を受けていない、あるは納税地の選択をしていない外国法人は麹町税務署に申告書を提出することになります(法法17条、法人税法施行令16条)。

国内PEがない外国法人がどこまで正直に法人税の確定申告をしているか実体はわかりません。
最近は租税条約の情報交換規定だけでなくCRS(共通報告基準)による各国税務当局間の情報共有が進みつつありますから、無申告の外国法人のあぶり出しも比較的簡単になりそうです。

 

***
2016年の帰属主義へのシフトは国際的な流れに沿ったものです。
OECD(経済開発協力機構)が旗振り役になって多国籍企業に対する所得税・法人税の課税範囲と所得計算方法の国際統一ルールを定めました。このAOA(Authorized OECD Approach)と呼ばれるイチシアチブに準拠して日本の法人税法も改正されています。
20世紀はどの国も自国の課税権を主張しあうばかりでしたが、21世紀になってからは限られたパイを分け合うために協調するようになっています。
ただし、ここでもアメリカだけは独自路線を歩んでいます。
さすがアメリカ。自由を謳歌しています。

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