今日から2018年分の所得税確定申告書の受付が本格化します。
税務署も大忙しです。
いざ申告書を作り始めて疑問がわいて、税務署に聞いてみようと思っても、なかなか電話がつながらず、途方にくれている方も増えてくると思います。
この時期になると、私のところにも身内・友人から「ちょっと教えて…」と質問がくるようになります。
ということで、本日のテーマは、ちょっと聞きたい「確定申告にまつわる素朴な疑問」です。
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1年を通して収入が給与だけの方なら、年収が2,000万円を超えない限り、年末調整で所得税の納税が完結しているはずなので、本来は確定申告は「不要」です。
「不要」というのは「する必要がない」ということであって、確定申告してはならないという意味ではありません。
したがって、確定申告したほうが有利な場合は、確定申告してもよいのです。
例えば、年末調整で対応できなかった控除(医療費控除、住宅ローン控除など)がある場合は、確定申告するほうが有利になります。
確定申告することでより多くの所得控除や税額控除がとれるようになり、その結果、「年末調整後の所得税額」>確定申告書上の「納付すべき所得税」となり、差額の還付を受けることができるからです。
もっとも、年末調整後の年税額がゼロだった方は、確定申告しても還付される税額がないので、わざわざ確定申告するメリットはありません。
ただし、ローンで住宅を取得した年は、還付額が見込めなくても、確定申告して住宅ローン控除を適用する意思表示を税務署に示してください。
年末調整された給与以外に収入があり、その所得金額(収入金額-必要経費)が20万円を超えるときは、確定申告が必要になると思ってください。
ただし、これにも例外があります。
詳しくは、ブログ「副業と確定申告」をご参照ください。
原則として確定申告書を提出すべきです。
ただし、例外もあります。
給与所得を含めすべての所得を合計した金額が各種所得控除の合計額を超えない場合、すなわち、課税される所得金額がゼロか赤字になる場合は、申告不要です。
一般的に「給与支給額が103万円以下なら確定申告不要」といわれる根拠でもあります。
給与所得については、必要経費の概算額として「給与所得控除」が認められています。
その最低額65万円と、だれにでも認められる「基礎控除」38万円の合計が103万円なのです。
給与の支給総額が103万円を超えない限り、実際に課税される所得金額は生じません。
また、課税される所得が黒字になる場合でも、これに税率をかけて算出した所得税額が「配当控除の額」を超えないときは申告不要です。
(参考条文:所得税法120条)
居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第2章第4節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第87条第2項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第89条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるときは、第123条第1項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年2月16日から3月15日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
実際に納付すべき税額がないとわかっているなら、わざわざ確定申告しなくてよいということです。
もっとも、そのような場合であっても、所得税が源泉徴収されている収入があるなら、確定申告することで源泉徴収税額の還付を受けることができます。
給与総額が103万円以下でも源泉徴収税額があるなら、還付申告したほうが得です。
事業所得、不動産所得、山林所得がある方は、その所得金額の計算明細を確定申告書に添付することになっています。
その計算明細には「青色申告決算書」と「収支内訳書」の二種類があります(それぞれに「不動産所得用」とそれ以外の所得用の「一般用」があります)。
青色申告決算書に基づく申告が「青色申告」、収支内訳書に基づく申告がいわゆる「白色申告」です。
法律上は「白色申告」という用語はなく、正式には「青色申告以外の申告」と呼ぶべきものですが、一般的呼称として「白色申告」が定着しています。なぜ「赤色」や「黄色」でないのかは不明です。
青色申告の場合、事業所得・不動産所得の計算上、65万円(簡易な決算書作成の場合は10万円)を控除できます(青色申告特別控除)が、勝手に青色申告はできません。
「複式簿記」に基づいて体系的な帳簿を作成し、その帳簿をもとに青色申告決算書を作成できることを前提に、税務署長から承認を受けている場合にのみ青色申告による申告が認められます。
青色申告の承認を受けるには、税務署長あてに「所得税の青色申告承認申請書」を、最初に青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内。)に提出しておく必要があります。
承認を受けることができても、その後帳簿作成がずさんだったりすると、承認が取り消されることもあります。
青色申告の申請をしていない(承認を受けていない)場合、または受けていた承認を取り消された場合は「白色申告」しかできません。
売上に先行して費用が発生することはよくある話なので、たとえ売上がゼロの年でも必要経費を申告してよいと私は思います。
ただし、最低でも以下の2要件を満たす場合に限ります。
ちなみに、たな卸資産(商品、製品、仕掛品、原材料などの販売目的の資産)の仕入については、年末時点での在庫分は必要経費にできません。
申告書の様式にはAとBがあります。
A様式は申告する所得が給与所得や公的年金等・その他の雑所得、配当所得、一時所得のみで、予定納税額のない方向けの簡易な様式です。
B様式は誰でも、何にでも使えるフルスペック・バージョンです。
事業所得、不動産所得、譲渡所得がある場合、損失(所得金額のマイナス)を申告する場合はB様式を使います。
各様式は国税庁HPからダウンロードできます。
税務署でも配付していますが、最近A様式の在庫が少ないようで、A様式をもらいにいってもB様式を渡されることがあるようです。
国税庁HPの確定申告コーナーの推奨環境に準拠していないとうまく動かないことがあります。
Windows 10+Internet Explorer 11なら問題なしです。
事前手続きが必要です。
まず、電子証明書(マイナンバーカードなど)を入手する必要があります。
次に、電子証明書を読み込む「ICカードリーダー」という機器が必要です。
そして、税務署にe-Taxの利用開始届出書を提出して「利用者識別番号」を取得しなければなりません。
マイナンバー・カードの入手には申請から受け取りまで3週間くらいかかります。
利用開始届出書はインターネット経由で提出(オンライン提出)できます。
その場合、税務署からの「利用者識別番号」もオンラインで通知されますので、すでにマイナンバーカードをお持ちなら、事前手続きにそれほど時間はかからないと思います。
ICカードリーダーは家電量販店やアマゾンで手に入ります。
私はコレ使ってます。
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今後寄せられる「素朴な疑問」についても続編でご紹介していこうと思います。
お問い合わせ、お待ちしております。